第1回 もう一度基本から整理!結婚式に関する『音楽著作権』
ここ数年、ブライダル業界で大きな話題になったテーマのひとつが
『音楽著作権』です。
私もBRIGHTの活動を展開する中で何度もご相談を受けておりますが、今でもまだ一部に誤解が残っているようですので、今回のコラムでシンプルに整理したいと思います。
まず『著作権』という概念は、貸与権や譲渡権など複数の権利(支分権)の集合体であることから、その中からブライダルビジネスにおいて関係のある権利を特定しないといけません。
それが「演奏権」と「複製権」です。
まず、主にホテル・結婚式場に関係する「演奏権」とは、著作物を公に演奏したりする権利を指します。
この権利は、原則としてその楽曲を作詞・作曲した人(以下、アーティストといいます)が保有しています。
アーティストは、自分が一生懸命心血を注いで作った楽曲を勝手に演奏して商売をしている人がいれば、この「演奏権」に基づいて、「演奏するのをやめろ」または「適正なお金を支払え」などと言うことができます。
この「演奏」という言葉にはCDを再生してBGMを流したり、実際に楽器を演奏したり、歌ったりすることが含まれますので、結婚式場の運営者は、「結婚式場でBGMを流す、または演出や余興で演奏する」ためには、その楽曲を作ったアーティストに対して許諾を求めないといけません。
しかし多くのアーティストは自分で著作権の管理をする暇はありません。
そこで、出てくるのがJASRAC((社)日本音楽著作権協会)です。
JASRACは、アーティストに代わって日本国内で流通している約300万曲の管理を代行しているので、挙式・披露宴で楽曲を使用するためには、JASRACに対してその使用許諾を得る必要があるのです。
以上が「演奏権」についての概略です。
続いて、主に映像製作会社に関係する「複製権」とは、著作物を複製(コピー)する権利を指します。
この権利は、アーティストだけでなく、CD等を製造したレコード会社にも帰属します。
ここがややこしいところで、要するに、「演奏権」と違って、著作物を複製(コピー)する場合にはアーティストだけでなく、レコード会社にも許諾を得なければならないのです。(ちなみに、その作業を代行してくれる機関として誕生したのが、ISUM((社)音楽特定利用促進機構)です。)
問題は、法律が想定している「複製(コピー)」の概念と、ブライダルビジネスにおける「複製(コピー)」の実態との間に以下のように大きな乖離がある点です。
法律の「複製(コピー)」に関する考え方は、アーティストやレコード会社が頑張って作成したCDを何者かが無断で複製しそれが世の中に広まってしまうと、それによりCDが売れなくなり、音楽文化が衰退してしまう危険性がある、だからこそ、権利者は「複製(コピー)」したい者に対して許諾をするか否かを判断できるし、許諾に際して許諾料の支払いを求めることもできる、というものです。
しかし、ブライダルビジネスにおける楽曲の「複製(コピー)」とは、せいぜい
① プロフィールビデオにおけるBGM
② 記録用ビデオ上に記録された当日のBGM
であって、確かに楽曲を映像に「複製(コピー)」したとしても、いずれも広範囲に拡散するなどして、CDの売上に悪影響を及ぼす危険性はほとんど考えられないものばかりです。
「それなのになぜ高額な許諾料を支払わないといけないの?」
という疑問の声がブライダル業界に残っているのは、私も感覚としてはとても理解ができるのですが、以上のように、法律はブライダルビジネスを想定して「複製(コピー)」についての規定を設けているわけではない点に、この不幸の原因が存在しているのです。
ブライダル事業者にとっては頭の痛いことの多い「音楽著作権」ですが、法律が存在する以上、いくらハードルが高くても、合法の範囲で対策を講じていくしかありません。
もちろん、BRIGHTとしては、そのための有益な情報を今後も発信していきたいと思っています。
以上