3.9JASRACショック なにが問われているのか?

第2回  3.9JASRACショック

          ~なにが問われているのか?

平成29年3月9日付で一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が発表したリリースは、ブライダル業界を騒然とさせました。

リリースの要旨をまとめると、JASRACが「プロフィールビデオ」や「記録用ビデオ」等のブライダルコンテンツを製造する事業者に対し、その音楽著作権の処理に不備があるとして、JASRAC管理楽曲の「使用禁止」と「損害賠償」を求めた訴訟を東京地方裁判所に提起した、というものでした。

 『ブライダルビジネスと音楽著作権の関係』については、以前から大きな関心を集めていたテーマでしたが、今回、ついに音楽著作権者側から「実弾」が発射されたことにより新たな局面に突入したと言えそうです。

ここで改めて今回の事案においてになっているのかを整理します。

まず、今回問題となっているのは、著作権のうち、楽曲をDVDやCD等の媒体に固定できる「複製権」と呼ばれる権利です。

権利者は第三者が無断で楽曲を映像と合体させDVDやCDに焼いていた場合など(ブライダル映像でいえば、「プロフィールビデオ」に楽曲をBGMとして使用したり、「記録用ビデオ」の中に会場内に流れるBGMを収録することがこれにあたります。)に、その行為者に「私の楽曲を勝手に使用するな」または「使用するなら金銭を支払え」という主張をすることができます。

 次に「複製権」は作詞・作曲家(著作権者)とレコード会社(著作隣接権者)に帰属します。

このうち多くの作詞・作曲家は、自らで「複製権」の管理をするのは大変なので、JASRACなどの著作権管理団体に自らの著作権の管理を委託しています。

今回は、このJASRACが作詞・作曲家に代わって権利を行使してきたわけです。

以上を前提にしてですが、私は以前から、この「複製権」に関しては音楽業界とブライダル業界との間で大変不幸なすれ違いがあると痛感しています。

そもそもこの「複製権」の取り扱いについて音楽業界側が高い関心を示しているのは、せっかく作った楽曲が無断で複製(コピー)されて広く出回ればCD等の売上ダウンに直結してしまうというリアルな危機感があるからです。

これは理屈の上でも「確かにそうだ」と誰もが納得できると思います。

一方で、ブライダルコンテンツの場合は、一般にはせいぜい2~3枚の複製なのだからCD等の売上ダウンにはつながらないのではないか、という純粋な(法律論を離れた)「やりきれなさ」がブライダル事業者側の胸に去来するのも事実なのです。

 結局のところ、著作権法がブライダルコンテンツのことを想定して作られたものではないことに、この問題の『不幸』があります。

同じ「複製」でも、DVDやCDの海賊版を大量に製造し流通させるようなケースと、新郎新婦とせいぜい親族のみが視聴するであろうブライダルコンテンツに楽曲を利用するケースでは実質的な影響には大きな差があるにも関わらず、やはり「複製」は「複製」として規制されてしまうわけです。

(なお音楽著作権者側から言わせれば「だからISUMで用いられるブライダル向け特別金額を設定しているではないか」という主張になるわけで、これはこれで筋が通っています。)

 私も映像制作事業者から「法律論」を超えたこうしたご不満の声をお聞きすることは多々ありますし、心情的にはよく理解できるのですが、無断で「複製」行為をすることは権利者の利益を侵害する行為であることを軽んじることはできません。

いずれにせよ、局面が大きく変わりました。

ホテル・式場においても、映像制作のパートナーが適正に著作権(複製権)許諾を得ているのか、またどういう商品設計であれば無理なく営業を継続できるかを、ともに確認し、考え、変更を要するのであれば早急に解決策を見出していくことが、今まさに求められています。

以上