3.9JASRACリリースの中身を読み解く

第3回 3.9JASRACリリースの中身を読み解く

去る3月9日付で一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が発表したリリースは、ブライダル業界、特に映像制作事業者に大きな衝撃を与えました。

その概要をまとめると、JASRACが大手映像制作事業者に対して、音楽著作権のうち「複製権」に関して適正な許諾を得ないままブライダルコンテンツを製造、販売したとして、「楽曲の使用禁止」と「損害賠償」を求めて東京地裁に提訴した、というものでした。

当然のことながら当該事業者様にも言い分がおありになるでしょうし、私は当事者ではないので本訴訟そのものについて言及する立場になく、またそれに値する具体的な情報は持ち合わせていませんが、このリリースが出されて以降、全国の事業者様から音楽著作権一般に関して多数のお問い合わせを頂戴しておりますので、その主なものをQA形式で共有したいと思います。 

※なお、前提知識の面の説明は割愛していることをご了承ください。

Q1 損害賠償は何年遡ることが可能なのか?

A1 法律の理論構成にもよりますが、最長10年遡っての請求が可能です。

Q2 損害賠償額の算定はどのように行われるのか?

A2 著作権法第114条には以下の3つの算定または推定方法が規定されています。権利者は原則としてそのいずれかを選択して請求額を算定することができます。

① 権利侵害された物の数量 × 権利者の単位あたりの利益

  ② 権利侵害をした者が得た利益

  ③ 本来支払われるべきであったライセンス料相当額

 本紙2017年3月11日号(第977号)の記事によれば、JASRACとしては③の考え方に基づき請求する方針を示しており、また従前適正な登録をしていなかった事業者には「1分1,300円」を基準に算定することを示唆しています。

Q3 レコード会社からの請求には注意しなくてよいか?

A3 音楽に関する「複製権」は作詞作曲者(著作権者)と音源を制作したレコード会社(著作隣接権者)に帰属しています。JASRACは作詞作曲者から著作権管理の委託を受けている団体であり、その委託に基づき今般のような訴訟を提起しているわけですが、レコード会社の権利は取り扱っていないため、今後JASRACとは別にレコード会社からも損害賠償等の請求を受ける可能性はあります。

Q4 ホテルや式場などの「会場」は関係ないのか?

A4 複製行為(楽曲をDVD等の媒体に固定する行為全般)を行っていない「会場」は、「複製権」の侵害が問われることはないというのが原則です。しかしJASRACは今般のリリースにおいて、わざわざ「会場」への責任追及の可能性についても示唆していて、専属の映像事業者が違法な複製をしていることを黙認していたり、違法な複製により「会場」も利益を得る構造が認められる場合などには、「会場」も実質的な意味での複製者として責任を問われうる、と牽制しています。

Q5 結婚式での上映目的の映像作成は「私的使用」の例外に該当しないのか?

A5 著作権法第30条第1項では「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用する」場合には、「その使用する者が」、権利者に許諾を得ることなく複製をすることが原則可能とされています。結婚式の参列構成次第では「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」に該当する場合もあるかと思うのですが、映像制作事業者が新郎新婦等からの依頼を受けて複製を行うことは「その使用する者が」複製する場合でないことは明確ですので、この理屈で著作権対応を免除されるという考え方は厳しいと判断します。

以上