新郎新婦の「手作りDVD」と音楽著作権

第5回 新郎新婦の「手作りDVD」と音楽著作権

全国のホテル・式場さんが音楽著作権に関して以前から頭を悩ませていた問題のひとつに、「新郎新婦(または参列者。以下同じです。)が自作するDVDの持ち込み」問題があります。

 どれだけホテル・式場さんが挙式・披露宴で用いる楽曲に関する音楽著作権について適正な運用を心掛け、外注先の映像製作事業者にも適正な許諾手続きを徹底してもらっていても、新郎新婦が「挙式・披露宴で上映する映像を自作して持ち込みたいです」と申し出られた時の『ベストな回答』は何なのか、という点に明確な答えがなかったのです。

 実はこの問題、つい最近大きく改善されたのをご存知ですか?

 それを説明する前に、従前の問題点を補足説明しておきます。

ブライダルビジネスに関係する音楽著作権には主に「演奏権」と「複製権」があるところ、まず、挙式・披露宴会場内にBGMを流す際に関係してくる「演奏権」については、多くのホテル・式場はJASRACとの間で包括契約を締結することで対応してきました。

 次に、プロフィールビデオや記録用ビデオなどに楽曲をBGMとして固定して使用する(これを著作権法上は「複製」と言います。)際に関係する「複製権」については、その「複製」行為を行うホテル・式場またはそこから外注を受けた映像製作事業者が、主にISUMを介して権利者から適正に許諾を得ることで対応してきました。

なお、「複製権」は①楽曲の作詞作曲家(著作権者)と②音源データを収録・製作したレコード会社(著作隣接権者)の双方に帰属し、本来は①については主にJASRACに、②については楽曲ごとに製作したレコード会社に各々許諾を得なければいけないところ、ISUMの窓口を用いれば、ひとつの申請で双方の許諾が得られる仕組みとなっています(ISUMについては「選択できる楽曲が不足している」等の問題点を指摘する声もありますが、本稿ではこの点には踏み込みません)。

しかし、ISUMはそのサービスの利用者を「ブライダル事業者」に限定しているため、ブライダル事業者ではない新郎新婦が自作DVDを製造する際にはISUMを利用できませんでした。

この点、JASRACには新郎新婦も利用できる窓口が設けられていたものの、もう一方の権利者であるレコード会社に対しては自らで利用許諾を得なければならず、ただでさえ忙しい新郎新婦が常に適正な許諾を得ることは、実質的には期待できない現状がありました。

 こうした背景があったため、ホテル・式場さんとしては「自作のDVDを持ち込みたい」という意向の新郎新婦に対して、「ご自身で適正な許諾を得てくださいね」とアドバイスするのもどこか気が引ける面がありましたし、またいくら自らが「複製」するわけでなくても、著作権に関する注意喚起をしないまま利用を黙認することも道義的にどうかという面もあり、非常に悩ましく、その回答に頭を抱えてきた経緯があったわけです。(補足すると、本年3月9日付JASRACのリリースにおいては、著作権の不正利用を黙認している会場に対しても責任追及する場合があることが示唆されています。)

 しかし、本年4月1日より、この問題は大きく「改善」されました。

日本レコード協会が(ブライダル事業者ではない)新郎新婦でも直接許諾申請が出来る窓口を設け、わざわざ個別のレコード会社に申請しなくても、統一の料金で許諾を得られるようになったのです。

 現時点においてその窓口から申請できる楽曲はISUMのリストと同範囲とのことで、必ずしも新郎新婦が使用したいすべての楽曲が網羅されている訳ではありません。

ただ、この窓口が出来たことで、ホテル・式場さんとしては、「DVDを自分で作りたい」という新郎新婦に対して、以下の窓口をご案内し、「音楽著作権についてはこの窓口が適正な許諾を得るようにしてください」とご説明することができるようになりました。

※動画を用いる場合の窓口。静止画を用いる場合は複製部録音課

(03-3481- 2169)が窓口。

完全ではなくても大きな一歩です。ぜひ新郎新婦にも正しくご案内くださいね。

以上