A 自らの定めるキャンセル料の正当性を堂々と主張できるかどうかは、規約や約款に規定したキャンセル料条項がどこまで適正なものと言えるかで決まります。以下、概要を説明いたします。
新郎新婦の都合によりある日突然契約がキャンセルされてしまうと、事業者は次の2つの側面で「損害」を被ります。
1つは「営業機会の喪失」。せっかく新郎新婦のために「その日時」を空けておいたのに、日が近づけば近づくほど再販できるチャンスが減っていってしまいます。
2つめは「費やした労力の無駄」。すでに契約後に打ち合わせを開始していれば、そこに費やした労力は全くの無駄になってしまいます。
法律上はこうした「損害」は新郎新婦に賠償を求めることができるのですが、難しいのは「損害額がいくらか」を算定することです。確かに「あなたのキャンセルでいくらの損害が出ました」と個別に算定するのは難しいですよね?
そこで民法420条は「契約時に予め損害賠償額を決めておくことができるよ」と規定しています。この条文に基づいて各事業者が設けているのが「キャンセル料」なのです。
したがって、本来は契約書にキャンセル料が規定されていて、契約締結前に充分な説明をしていれば、お客様に対して堂々とキャンセル料の支払いを求めてよいのです。しかし、ここで気をつけなければならない法律が出てきます。
それが、『消費者契約法』です。
この法律の第9条第1号では「いくらキャンセル料を決めておいても、それが“平均的な損害”を超えた場合は、超えた部分は無効だよ」と規定しています。つまり「取り過ぎのキャンセル料は許さないよ」と法律が言っているのですね。この“平均的な損害”についてどう捉えるべきなのかが、ここ10数年ずっとブライダル業界において問題になってきたのです。
この点、ホテルや式場などの「会場」については、2015年に最高裁が画期的な判決をくだし“平均的な損害”の算定方法が明確になりました。
具体的には、各事業者が自身の過去の例などを踏まえ、挙式日からどれだけ前なら再販できない可能性がどれほどあるかという「非再販率」を各時点ごとに算出して、それを軸に“平均的な損害”を算定するというものです。先ほどの1つめの損害、「営業機会の喪失」に着目した考え方ですね。
一方で、フリーランスプランナーやパートナー事業者の場合には、「会場」のように年間百数十件も結婚式を行っているわけではないため、具体的な数字の根拠をもって自身の事業における「非再販率」を算出することは難しい面があります。
この場合には、2つめの損害である「費やした労力の無駄」に着目して、「ここまでやっていたらサービス全体の何%はすでに提供済みだからその分は払ってください」という発想でキャンセル料を設定したほうが説明しやすいだろうと思います。
BRIGHTはこれを「やったとこまで理論」と名付けて普段からお勧めしていますが、詳しくは改めてご説明します。