1.初動時のお詫びの一言
BRIGHTの弁護士ともよく話題にのぼるのですが、「クレーム」の第一報が入った時に「謝り過ぎてしまう」ことによりかえってトラブルが複雑化するケースがよく見られます。
お客様のお怒りに対して誠実に向き合う姿勢は大切ですが、後になってよく調べてみたら多分にお客様の勘違いに起因したものだった、なんて場合も。
それでも最初に非を認めてしまっているがために「一度そちらは非を認めたじゃないか」「今になってこちらの責任とはどういうわけだ」と話がややこしくなってしまうことも少なくありません。
一方で、お怒りのお客様を相手に「実態が分からないから」といって一切謝罪しないなんてことも非現実的です。
そんなときに便利なのが「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」という言葉です。
お詫びしているのは、お忙しいのにわざわざお叱りのお電話をいただくというご迷惑をおかけしていることに対してであって、その言葉の後に「あいにく今はご指摘の内容について事実関係を把握できておりません。
社内にて確認の上、然るべき立場の者より回答いたしますのでしばらくお待ちください」などと続ければ、法律的にも完璧な対応だと思います。
もちろん、なかなか教科書通りの対応が難しいのは重々承知していますが、初動で安易に非を認めることにデメリットがあることは意識しておいておかれるとよいと思います。
2.「社長を出せ」「誠意を見せろ」への回答
お客様からこうしたご指摘をいただくことも少なくありませんが、日本の法律においては、どんなに事業者側に非があったとしても、「誰が」「どのような方法で」謝罪するのかを強制できる権利は原則として認められていません。
あくまで事業者の判断で「誰が」「どのような方法で」謝罪するかを決定すればよいのであって、「私が窓口となります」または「これが当社としての精一杯の誠意です」などと回答することに法律上の問題はありません。
一方で、いくらお客様の言い分が正しくても、事業者の意に反して過剰な謝罪を求め、またはそれをさせる行為は「強要罪」などの犯罪を構成する場合すらあります。たとえば「土下座」を強要するなどの行為は、これにあたる危険性が高いです。
3.参列者や新郎新婦の家族への回答
「クレーム」は新郎新婦からのみ寄せられるとは限りません。
参列者や親族から直接寄せられるケースもありますし、あるいは「自分が窓口になる」と新郎新婦の“代理”を名乗り出る方もおられるでしょう。
このようなケースだと、事業者にとっては対応しなければならない相手が増えてしまい、まとまる話もまとまらなくなるリスクがあります。
また、法律的な観点からも、契約当事者でもない人と交渉しても、結局は契約当事者である新郎新婦に確認を求める必要が残ることから、手間ばかりかかるというマイナス面があります。
当事者でない「代理人」と話した方が進めやすいという特別な事例であれば別ですが、事業者として「代理」を望まない事情があるのであれば、前述の通り「誰が」「どのような方法で」謝罪するか、交渉するかは事業者で判断すればよいわけですから、「自分が窓口だ」と名乗り出た方がおられた場合でも(それが正式に受任した弁護士等でなければ)「契約当事者の方と直接お話しをいたしますのでご遠慮ください」と断りをいれることも差し支えありません。