そもそも、会場が「持込」を規制する目的はどこにあるのでしょうか。
突き詰めれば、主に3つの目的が導き出せます。
1つ目は、日経記事でも指摘された「経済的事情」です。
会場が提携パートナーに婚礼に関する商品やサービスを外注する際には、提携パートナーに対しては業界用語で「下代(げだい)」と呼ばれる料金を支払う一方、新郎新婦には「上代(じょうだい)」と呼ばれる代金を請求します。この「上代」と「下代」の差額が、実質的な意味での手配料または紹介手数料として会場に落ちる仕組みです(予め設定された「掛け率」に基づき「下代」が算定される場合もありますが、考え方は一緒です)。
また、外部提携パートナーとの提携関係においても、予め紹介手数料が設定されることが一般的です。
このように会場のビジネスモデルにおいては、1組ごとの結婚式で新郎新婦から支払われる提供する会場費、料飲代金そしてその他サービスに対する代金という売上の他に、提携パートナーや外部提携パートナーとの取引により発生する手配料または紹介手数料といった類の収入を得ることが想定されているのが一般的です。
このモデルの下では、提携関係に属さない持ち込み事業者の登場は、会場の利益構造に適合しない存在の登場を意味し、その分会場の収益を圧迫することから、それを補う意味で「持込料」を設定しよう、または「持込」そのものを禁止しようという発想につながります。
2つ目は、婚礼当日の「円滑な進行を図る」目的です。
言うまでもなく、結婚式サービスは、会場のスタッフのみならず提携パートナーや外部提携パートナーと協働して提供されるものであるため、所属する組織や置かれている立場を超えて、同じ目標をもった1つのチームとしての団結が求められます。
しかも、一生に一度の晴れ舞台という特徴から、他のサービスにおいてはさほど問題視されないであろう、「わずか数分の遅れ」または「進行の軽微な変更」が発生した場合でも、大変大きなクレームに発展してしまうリスクもはらんでしまいます。
そこで、新郎新婦に対して一義的に結婚式サービスについての責任を負う会場としては、普段から接し勝手知ったる仲であり、婚礼会場の設備や導線に精通し、なにより自社のスタッフとも関係性の深い事業者と協働することは、不測の事態を予防するための大きな安心材料となります。
日経の記事はこの点に全く触れられていないのが残念でなりません。「持込」規制には、ある側面としてはこうした会場側の切実な思いがあるということも無視してはならないでしょう。
最後に、「会場特有のこだわりの発露」という側面もあるでしょう。
すべての会場がそうではないですが、たとえば運営母体が花屋であったり、写真屋であったりという背景から「装花だけ」「写真だけ」は規制があったり、あるいはその会場の特徴を最大限活かすために、ある特定の商品またはサービスを軸に演出を行うことを決めている場合などにおいては、特定の商品またはサービスに限り「持込」規制をかけるという場合も見受けられます。
以上整理してきたように、依然として多くの会場に「持込」規制が存在している背景には、こうした理由が存在しています。
しかし今般の日経記事では、こうした背景をもつ「持込」規制に対して「消費者契約法に抵触する可能性がある」という指摘がなされています。もし法律の規制に反する事実があれば、いくら会場側がこのような理由を述べても意味がありません。
次はその点について検討してみましょう。
第3回 おわり