「持込」問題にどう対処すべきか? 第6回 顧客の不満の原因はどこにあるのか

 第4回と第5回で明らかにしたように、「持込」規制自体については、直接的に何らかの法律に抵触するという関係性にはありません。

 ただ、唯一法的に留意すべき場面としては、「契約締結前に持込規制の内容を正しく伝えていない場合」が挙げられます。

 前述した消費者契約法には、こんな条項も存在します。

(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)

第4条第2項 

消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。

 つまり、契約前の段階において、

① 消費者の利益になることを説明しながら

② 不利益になること(ただし説明がなければ通常存在しないと考えるものに限る)をわざと説明しなかった場合

で、消費者側がその「不利益になること」が存在しないと誤認し、契約をした場合には、後からこれを取り消すことができると規定しているのです。

 「持込」規制が直ちに「不利益になること」に該当するか、あるいは「通常存在しないと考えるもの」に該当するかは微妙なところですが、ほとんどの新郎新婦にとって結婚式は初めてであることを鑑みれば、新郎新婦にとってブライダル業界の慣習などは知らない話であって、契約前の段階では「衣裳やフォトグラファー等を自由に選択することができる」と期待していることは充分に予想されることです。

 したがって、この条項の存在や本件の適否とは関係なく、会場のスタッフは、契約前に「持込」規制の有無やその内容については、明確に新郎新婦に説明をし、そのルールに同意してもらうことは必要不可欠でしょう。

 ただ問題は、そこまでしっかりと説明していたとしても、後から「持込」規制について不満を抱く新郎新婦が多いという事実です。こうした不満はどこから発生するのでしょうか?

 まず考えられることとして、第一に、契約前ではまだ現実味がないまま説明を受けている可能性が挙げられます。

 結婚式場を決定した段階では、一般的な新郎新婦は日取りや会場そのものに関心が集中し、そこでどんな式を挙げるかという内容については思いが至っていないことが想定されます。したがって、契約前に会場スタッフから約款の説明において「持込」規制について説明されたとしても、現実的なものとして考えていなかった可能性があります。会場側としてはそういった背景も踏まえて、より慎重に説明をしておく必要はあるでしょう。

 第二に、結婚式を提供する主体は誰なのか、という点についての、会場と新郎新婦との意識のずれにも留意が必要です。新郎新婦の中には「自らが主体で結婚式を挙行する」という意識の方が多いと思いますし、結婚式そのものを見れば確かにそうした面もあるのですが、会場側の視点から言えば、新郎新婦の委託を受けて、「会場が主体となって結婚式サービスを提供する」のです。

 そしてサービス提供元であり、かつ施設運営者である以上、一定のルールを定め、予め同意を得たそのルールの範囲でサービスを提供するという姿勢は(会場側にとっては)当然のことなのですが、「そもそもの部分」で新郎新婦との間で認識の齟齬があると、「主体である自分たちが希望しているのにどうして通らないのか」という不満につながる面があるのだろうと思います。

 最後に、根本のところですが、「持込」規制を必要とする目的について、会場側が新郎新婦に正しく説明できていないことが考えられます。

 なぜ「持込」規制があるのか。

 第3回でも触れましたが、我々の立場からすれば、「持込」規制を設ける目的は3つほど挙げられます。ただし、この内容を正しく、また合理的な理由をもって新郎新婦に説明できているでしょうか。

 もし規制を設ける目的に合理性がなければ、いくら「法律上は問題がない」と強弁したところで、新郎新婦にご納得をいただくことは困難でしょう。第3回でも触れた「持込」規制の目的に合理性はあるのか、そのあたりを次回で探っていきましょう。

第6回 おわり