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「持込」問題をどう対処すべきか? 第7回 「持込」規制に合理性はあるのか

 本稿では会場が「持込」規制を設ける3つの「目的」と、「持込」規制という「手段」との間に客観的な合理性が認められるのか?というテーマについて検討してみます。

 第3回で私は、「持込規制」の目的としては、

① 会場の経済的事情

② 結婚式の円滑な進行

③ 会場特有のこだわりの発露

の3つが挙げられると書きました。

これらを順に検討していくのですが、その前に今一度整理すべきは、「持込」規制の内容、すなわち上記の「目的」を達するための「手段」については、大きく分けて(1)全面禁止(2)持ち込み料の設定の2種類があるという点です。日経の記事ではこれらが混在した状態で解説をされていましたが、本稿ではこれらを明確に区別して検討していきます。

目的① 会場の経済的事情

  多くの会場において、その利益構造の中で、提携パートナーや外部提携パートナーとの取引で得られる手配料や紹介手数料が予め想定されている、という点は、すでに日経記事で報道されているように否めない事実です。

  この点、(1)全面禁止(2)持込料の設定のいずれの「手段」を採用してこの「目的」を達成しようとしても、いずれも一定の合理性が認められることはほぼ異論がないと思います。

  つまり、「持込事業者が入ってくると会場の利益構造が崩れる」から

(1)全面禁止してそれを防ぐ、または(2)持込料を設定してその担保をする、そのいずれも論理的な合理性が認められるはずです。

  ただ、だからと言って、「なぜ持込規制があるのか?」という素朴な疑問をもつ新郎新婦に対して、この理由「のみ」で回答することには心理的抵抗をもつ事業者も多いかもしれません。また、「それって結局、全部会場側の都合ってことですか?」などと不信感を与えることも考えられ、経済的事情のみで新郎新婦の納得を得るのは簡単ではありません。

目的② 結婚式の円滑な進行

  続いて、日経記事では無視をされたものの、会場としては切実なこの「目的」について検討してみると、「結婚式の円滑な進行を図る必要がある」から

(1)「持込」を全面禁止してそれを防ぐ、という論理の流れには合理性を見出しやすいと思いますが、だから(2)持込料を設定する、という結論に至る因果関係には、やや無理があるとの批判を免れないでしょう。

  「結婚式の円滑な進行」は、会場のみならず多くの新郎新婦も希望するところでしょうから、この「目的」自体は現場でも堂々と説明できるものだと思います。しかし、その「目的」のために、禁止ではなく、持込料を設定するという「手段」がなぜ効果を発するのか、という点はなかなか悩ましいところです。

  考えられる理屈としては「持込事業者の場合は、会場から予め施設の設備や導線の説明をしなければならないなどの“手間”が発生するので、その対価です」というものがありますが、「だったら、そのような手間は不要だし、もし持込事業者のミスで損害が発生しても会場に文句を言わないと一筆入れれば、持ち込み料はいらないのでは?」と問われると返答に窮することにもなるでしょう。

  会場にとっては切実な、「持込」を規制するこの2つ目の目的ですが、こと「持込料を設定する」という「手段」に限って言えば、これを肯定するには、何か理屈をつけ足さないと成り立ちえない可能性があります。

目的③ 会場特有のこだわりの発露

  会場特有の事情に基づき、特定の商品やサービスのみに「持込」規制を与えることは、(1)全面禁止についてはすんなり合理性を見出しやすいのではないでしょうか。

  つまり、「持込」に規制をかけることでその会場の「個性」が実現するわけで、その「個性」が売りの会場なのだから禁止しています、という説明は、新郎新婦にとっても充分に理解しやすいものでしょう。

  一方で(2)持込料の設定については、理由②の場合と同じく、悩ましい問題を完全には払しょくできませんが、全部ではなく特定の商品やサービスに限定して規制をかけることや、そもそもその会場の「個性」が気に入って検討している新郎新婦が、その「個性」の演出に不可欠な特定の商品やサービスを外部から持ち込もうとすることは考えにくいため、現実的にはあまり問題にはならないでしょう。

  以上整理してきたように、会場が新郎新婦に「持込」規制を説明する理由のうち最も説明しやすいであろう「理由② 結婚式の円滑な進行」については、全面禁止についてはその「目的」と「手段」の関係性に合理性を見いだせても、持込料の設定については、それだけで直ちに合理性を見出すのは困難と言えそうです。

となると、新郎新婦に、「なぜ「持込」規制があるのか」について心から納得してもらえる説明するためには、「理由① 会場の経済的事情」を秘して説明することには限界があると感じざるを得ません。理由①と理由②(会場によっては理由③も)を丁寧に、正直に説明をした上で、「だからこの会場では持込を規制しています。その点を踏まえてご契約いただけるかどうかのご判断をお願いします」といった形でご説明をする必要があるように思います。

  経済的な側面に触れることに一部抵抗はあるかもしれませんが、「真実の目的」を秘して説明をするよりも、誠実に、丁寧に、そして明確に目的からご説明をしたほうが、ご理解を得られやすいと私は思っています。

第7回 おわり

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