第五回は、前回に引き続き、契約書に押すハンコに関するあれこれについてです。今回は、②押印の種類について解説してまいります。
なお、コロナウイルスの感染拡大に伴い、今まではビジネスの現場で当たり前だと思っていた、「ハンコ」や「紙」の文化・慣習について、様々な議論が巻き起こっております。
今後リモートワークが増えていくと予想される中、契約業務においても、電子署名等の技術・サービスの活用が普及し、紙への押印という作業は減少していくことが予想されます。とはいえ、ここ数年で紙への押印が全くのゼロになるという可能性は低いので、ハンコ・押印に関する基本的な知識はおさえておきましょう。
主な押印の種類は、以下の通りです。
・記名押印
・割印
・契印
・訂正印
・消印
・捨印
①記名押印(きめいおういん)
契約書の内容に合意する旨の意思表示のため、手書きの署名の代わりに行うのが記名押印です。株式会社であれば、住所・会社名・代表取締役名をゴム印を押すか印刷した上で、その脇に代表印を押印します。
②割印(わりいん)
割印と契印がよく混同されやすいので、ご注意ください。割印は、複数ある契約書それぞれが同じ内容であることを示すために、複数の契約書にまたがって押印することを言います。契約書を重ねて少しずらした上で、それぞれの契約書にまたがるように押印します。
③契印(けいいん)
契約書が2枚以上になる場合、後になって中身を差し替えられたりしないように、契約書を製本し、見開きのページにまたがるように押印します。
④訂正印(ていせいいん)
契約書内で記載を誤った場合、誤記の上に二重線をひき、二重線の上に押印することで訂正することができます。その上で、訂正印の脇の余白に、正しい文字を記入します。
⑤消印(けしいん)
契約書に収入印紙を貼った際、その印紙に半分かかるように押す印のことをさします。
⑥捨印(すていん) これは上記④の訂正印を予め準備しておくような意味合いで押します。契約書が完成した後に、内容に誤りが発見されて訂正する場合、本来は改めて両者が訂正印を押印のうえ訂正する必要がありますが、書類の郵送等やりとりに手間と時間が発生します。その手間と時間を省くために、予め捨印を押しておいて訂正印にかえるというものです。ただ、訂正印を押しておくことによって、契約書の内容を自由に修正できることになりますので、リスクも伴います。無闇に訂正印を押さないようにしましょう。
以上、押印の種類について解説させて頂きましたが、いかがだったでしょうか。