*************************************** 【目次】 TOPICS もしお客様がこれを持ち出されたら?「日弁連Q&A」を徹底的に分析する! BRIGHTからのお知らせ ① 8/26 新型コロナ第2波に備えたオンラインセミナーの開催決定! ② 今の時代に備えるためのオンデマンドセミナー配信のご案内 ************* ************************** TOPICS もしお客様がこれを持ち出されたら?「日弁連Q&A」を徹底的に分析する! 日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会という組織(正確には日弁連に属する一委員会ですが 便宜的に以下、「日弁連」と言います。)が公表しているQ&Aは、「スポーツジムの契約」や 「旅行のキャンセル」など新型コロナウイルス感染拡大を巡り発生しかねない消費者問題を11個 抽出し、日弁連独自の見解をまとめた内容となっています。 その中で「結婚式のキャンセルについて」というのが2番目に掲載され(上位!)、日弁連の 見解が示されています。詳しくご覧になりたい方は以下の外部リンクをご参照ください。 ★新型コロナウイルス消費者問題Q&A★ https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/news/2020/topic2_4.pdf 初めに申し上げておくと、法律の解釈には様々な意見がありえますし、立場の異なる者同士の場合には 時にそれが対立することや分かり合えないことはやむを得ないものと考えます。 したがってBRIGHTとして、日弁連が「結婚式のキャンセルについて」どのような見解を示したとしても 自由だと考えますし、見解を示すこと自体を批判するつもりは毛頭ありません。 また、これはあくまで日弁連の見解であって当然ながら私たちが「それに従わなければならない」という 性質のものではないことも、冷静にとらえておく必要があるでしょう。 ただ、その見解が結婚式サービスの実態を的確に踏まえたものではなかったり、あまりに法律の解釈と して問題があるような場合には、これは私たちの業界にとっては「深刻な営業妨害」になりかねないもので ありますので、きっちりと指摘、反論しておく必要があるとの思いで、今回のメルマガではこの問題を 取り上げています。 その上で申し上げれば、このQ&Aには3つの「重要な問題」があると私は考えます。 重要な問題① 現状において「結婚式の開催は履行不能である」かのような主張は実態を踏まえているのか? Q&Aの7つ目のテーマ(5ページ)において、 「新型コロナを理由としてのキャンセルにおいてもキャンセル料を支払わないといけないか?」 という趣旨の問いに答える形式で 「ケースによっては、キャンセル料を支払わなくてよい可能性があります。」 とした上で(一見「断定」を避けた上で)その解説の中で日弁連は以下のような見解を示しています。 (抜粋/引用) 物理的には結婚式の開催が可能であっても,新型コロナウイルス感染拡大の状況下では, 密閉された空間における家族以外の不特定多数での会食や,都道府県をまたぐ移動をほぼ必然的に伴う結婚式の開催は, 法的には,社会通念上,双方に帰責性のない履行不能の状態にあると考えられます。 挙式披露宴実施業者は,挙式披露宴の実施という債務の履行ができないのですから,消費者(債権者)は, 代金支払いを拒むことができると考えられます。 披露宴参列者が「不特定多数」?(完全に「特定」ではないの?しかも「少人数婚」ってあるの知ってる?) 「都道府県をまたぐ移動をほぼ必然的に伴う」なんてなぜ言い切れるの? など、結婚式の実態を踏まえれば突っ込みどころは満載なのですが、 最も大切な突っ込みどころは、結婚式の開催について 「法的には,社会通念上,双方に帰責性のない履行不能(=やろうとしてもできない)の状態にある」 と「断言」しているところです。 言い方を変えれば「今の時点で世の中の常識的に結婚式は開催できないよね」と日弁連は言っているのです。 これって本当でしょうか? このQ&Aが発表されたのは本年6月(8月に改訂。当初はリクシィ様が「with コロナ 結婚式宣言」内で 提唱されていた「日程変更時」においては「実費負担でよいのでは」との記述を「解約時」の取扱いで あるかのごとく混同して引用している箇所がありましたが改訂版では削除されています。)です。 ご存知の通り、その前月である5月14日には経済産業省も関与して「業界ガイドライン」が発表されています。 また、緊急事態宣言下であっても結婚式場の使用や結婚式の開催に対する公的な自粛要請はありませんでした。 そして緊急事態宣言明けから特に、昨対比で件数は減少しているものの、ガイドラインを踏まえた涙ぐましい スタッフの努力と新郎新婦のご協力もあって、喜ばしいことに全国で結婚式は多数開催されています。 それなのに「結婚式は履行不能の状態にある」などと言い切れるものでしょうか? 業界の実態を踏まえていないのでは?と思われるこの点が、1つ目の問題点と言えると思います。 重要な問題② 解約当時は予想できずとも「結果的に」履行不能ならキャンセル料は不要かのような主張は法的に妥当か? Q&Aの8つ目のテーマ(6ページ)において、 「早い段階で大事をとって結婚式をキャンセルしたら、結果的に予定していた日には感染が拡大していた。」 という事例において、日弁連は以下のような見解を示しています。 (抜粋/引用) 新型コロナウイルスの感染拡大が問題になり始めた早い段階では予想できなかったとしても, 結果的にみれば,挙式予定日における挙式は,社会通念上,履行不能といえる場合があります。 (だから、その場合はキャンセル料を支払う義務はない、という趣旨の回答です。) つまり、「解約した時点」では予想できなかったとしても(←ここがポイントです。)、 「結果的に」予定日に何かあった場合には遡って履行不能と言える場合がある、と言っているのです。 こんな見解がまかりとおるのでしょうか? もしこの理屈でいえば、以下のような見解も日弁連は認めるのでしょうか。 「解約時には予想できなかったけれど、挙式予定日に地震が発生し、会場が崩れて開催不能だった」という場合でも 「結果的に結婚式はできなかったのだから、支払っていたキャンセル料を返せ」と後から言えるということでしょうか? また逆に「コロナを理由にした解約に対して、会場が厚意で解約料を特別に減額していた」という場合において 「結果的にワクチンが開発されて、予定日での挙式は全然問題のない社会情勢に戻った」時には、会場から新郎新婦に 「特別の減額はなかったことにしてください。追加で支払いをお願いします」と言えるということでしょうか? きっと日弁連は「それは論理の飛躍だ」と認めることはないでしょうが(私も上記2つの結論は妥当でないと思います) ではなぜこの件に関してだけ「判断をした当時には履行不能となる事態を予想できなかった事情でも、(BRIGHTとしては 現状が履行不能だとは思わないですが、仮に)結果的に予定日が履行不能になれば遡って履行不能案件として解釈される」 という理屈が生み出されるのでしょうか? 神ならぬ身である私たちは、その時点その時点の状況で判断していくしかないのではないでしょうか? もしコロナのこの事例においてだけこう考えるのだ、ということであれば、あまりにご都合主義な主張だと私は考えます。 「いつの時点の状況で履行不能かどうかを判断するのか?」 この点の法律解釈は機会を改めてもう少し掘り下げますが、頭の中に「?」が溢れてくる見解です。 重要な問題③ キャンセル料の金額は「実費相当額が目安となる」とする主張は過去の裁判例を踏まえているのか? Q&Aの8つ目と9つ目のテーマ(7ページ)において、 結婚式のキャンセル料水準について、日弁連は以下のような見解を示しています。 (抜粋/9つ目のテーマから引用) 消費者契約法第9条第1号により,事業者が「平均的な損害の額」を超える解約料を請求することはできません。 この「平均的な損害の額」については,基本的に実費相当額が目安になると考えられます。 失礼ながら、がくっと肩の力が抜けてしまいます。 まだこのテーマを掘り返しますか、と落胆せざるを得ません。 キャンセル料の水準を巡っては過去に不幸な対立の歴史があり、結果的に某大手企業と某消費者団体との訴訟が 数年にわたって最後は最高裁まで繰り広げられたことがありました。 その結果、解約料の本質を「逸失利益(機会損失)」とするBIAの示すモデル約款の見解、すなわち 『 適法なキャンセル料水準 = 逸失利益(機会損失) + 実費 』 だとする見解の妥当性が事実上認められており、この問題については司法の場で決着がついています (改めて当時携わった業界関係者の皆様に敬意を表します)。 それなのに、この最高裁まで争われた裁判例の存在を知ってか知らずか(いずれでも大いに問題ですが) まだ「結婚式の解約料は実費相当額だ」などという見解を日弁連が公に示しているのかと思うと、肩の力が抜ける思いです。 以上のように、日弁連が示すQ&Aは、 ・ ブライダル業界の実態の面からも ・ 法律の解釈面からも ・ 過去の裁判例からも 大いに問題がある一方的な内容だと私は考えます。 このQ&Aについては、次回の「BRIGHT NEWS」と下記で案内する「第4回オンラインセミナー」にて BRIGHTの増渕弁護士とともに詳細に解説していきますが、今回も1点だけアドバイスを入れておきます。 なお、もしお客様やご家族様などから 「日弁連がこう言っているのだから解約料は支払わなくてよいのではないか?」 というご指摘があった時には、以下のような回答が考えられます。 「日弁連が独自の見解を開示していることは認識しております。 ただ、一方で法務省は「原則として解約料は発生する」という見解を示しておりますし、 5月には経済産業省が窓口となって「業界ガイドライン」も示されている背景を踏まえると、 ご指摘の日弁連からの見解は、様々な意見があるうちの1つだと理解しております。」 否定はせずも、「それだけじゃないんだよ」というニュアンスを入れた回答案です。 一番気の毒なのは、この情報を信じて動揺する「新郎新婦」と、その対応に追われる「現場のスタッフ」です。 大変長文となってしまいましたが、 今回の解説が、猛暑の中現場で奮闘するスタッフの皆様のお力になれていることを願ってやみません。 *************************************** BRIGHTは日本で唯一の「ブライダル専門」の法律サービスとして、 全国の皆様へ法律的な「考え方」や「最新情報」などを無償で発信しております。 過去の記事の一部は「with BRIGHT WEB」にて無料で閲覧可能です。 https://bright-law.wixsite.com/with-bright-web なお、過去のセミナー動画など見放題の「with BRIGHT WEB」有料会員は こちらからお申し込み可能です。 https://goo.gl/forms/mHj7aHnrl8Bxonvp1 *************************************** BRIGHTからのお知らせ ① 8/26 新型コロナ第2波に備えたオンラインセミナーの開催決定! オンラインセミナー第4弾 「新型コロナ第2波とSNSネガティブ投稿への法的対応策」セミナー ………………………………………………………………………………………………………………… 新型コロナウイルスの第2波と呼ばれる感染拡大が続く中、 婚礼の「再延期」や「再再延期」または「キャンセル」などが発生しています。 一方で、第1波と異なって緊急事態宣言は出ていません。 これまでにない対応が求められる今、 「第2波現在に合った法律的な指針が欲しい!」 「自社で新型コロナ感染者が発生した場合、風評被害への防御策を知りたい」 というお声に応え、対応策を法的観点から解説するセミナーを開催します。 ………………………………………………………………………………………………………………… ▼CONTENTS▼ ①こんな状況下、前回と同じレベルの『特別措置』を設ける必要はあるのか? ②緊急事態宣言が出ていない中でも「コロナ解約は不可抗力」という理屈は通るのか? ③「再延期後の解約」の場合のキャンセル料はどう設定すべきか? ④もし自社で新型コロナ感染者が発生した場合に懸念されるSNS等を通じた「ネガティブ投稿」にはどう対応すれば良いか? BRIGHTの増渕勇一郎弁護士とともに法律に基づく「あるべき対応」を考えます。 ………………………………………………………………………………………………………………… ▼日程▼ 2020年8月26日(水)13時00分~15時00分 ※終了後には収録動画をお送りします。 ▼配信方法▼ Zoomウェビナー ※お申込みいただいた皆様にURLをお送りします。 ▼講師▼ BRIGHT代表 夏目哲宏、BRIGHT弁護士 増渕勇一郎 ▼受講料▼ 1名あたり2,000円(税込) ※複数受講の場合は人数分のお支払いをお願いします。 ※請求書が必要な場合は、「備考欄」にその旨ご明記ください。 ※クレジットカード決済の場合、カード会社のご利用明細書をもって領収書に代えさせていただきます。 ※お振込にてお支払いの場合、金融機関のお振込明細書をもって領収書に代えさせていただきます。 ▼ライブ配信のお申込みはこちら▼ ライブ配信 申込 これからの新郎新婦のために、私たちに何ができるのか? コロナ第2波の今、どう対応するべきなのか?この2時間をどうぞ、お見逃しなく。 ▼詳細はこちらをクリック▼ ② 今の時代に備えるためのオンデマンドセミナー配信のご案内 BRIGHTでは6~7月と3つのオンラインセミナーを開催してまいりましたが、 それらのセミナー動画をオンデマンド配信しております。 オンラインセミナーの利点は「いつでも」「どこでも」「何度でも」ご覧になれる点です。 以下にラインナップを列挙しておきますので「見逃した!」ものがあればぜひご覧ください。 ★詳細確認やお申し込みはこちらから↓★ https://bright-law.wixsite.com/with-bright-web/shop?sort=newest サンプル映像 https://youtu.be/P-0PR_NxNOg サンプル映像 https://youtu.be/QruAuICg_Eo サンプル映像 https://youtu.be/wxQhKMQApzo *************************************** 「BRIGHT NEWS vol.63」はいかがでしたでしょうか? 史上最も過激な内容だったのではないかと自覚しておりますが(笑) 私たちの業界側の努力や取り組みを無視したかのような一方的な見解についつい熱くなりました。 BRIGHTでは引き続き、ブライダル業界の皆様に少しでもお役に立てる情報を配信していきます。 今後ともご愛読のほどよろしくお願いいたします!
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