【この記事は2023年8月14日現在のものです】
*************************************************************
【目次】
TOPICS
『台風襲来時の結婚式契約』を巡る法律関係Q&A *************************************************************
TOPICS 『台風襲来時の結婚式契約』を巡る法律関係Q&A
BRIGHTによくお問い合わせのある『台風襲来時の結婚式契約』を巡る法律関係の諸問題を7つのQ&A形式でまとめました。
Q1.結婚式の開催日を前に「台風直撃」の予報が出ています。ただ開催に支障はないので会場としては予定通り開催するつもりですが、その方針自体は差支えありませんか?
A 原則として差支えありません。
台風が襲来しようと結婚式サービスの提供が可能なのであれば、原則としてそのまま開催という判断で差支えありませんし、逆に、新郎新婦の意向に反して会場側の独断で中止してしまうと契約違反の責任を問われかねません。
ただ、参列者等の安全確保に向けたアナウンス(来場される際の注意喚起)等はしておかないと、後から事業者としての注意義務違反を問われる場合がありえます。
Q2.結婚式当日に台風により「停電」または「施設の損壊」が発生してしまい、物理的に結婚式の開催が出来なくなりました。この場合の法律関係はどうなりますか?
A 民法第536条には『危険負担』という制度が規定されていて、台風をはじめ豪雨や地震などの「不可抗力」によって「サービスの提供ができなくなった時」には、新郎新婦はそのサービスの対価を「支払わなくてもよい(=請求を拒否できる)」とされています。
一般的な結婚式の場合には当日までに申込金や前払い金等はすでに支払われていますので、会場はこれらを新郎新婦に返金しなければなりませんし、「新郎新婦による解約」でもないので解約料も請求できません。ただ一方で、会場の責任で開催が出来なくなった訳ではないため、新郎新婦側が費やした交通費や宿泊代、購入済みの引出物代等を賠償する義務は負いません。
つまり「会場としては新郎新婦から支払われた金銭は全額返金しなければならず、解約料等も請求できないけれども(会場はその点では大損ですが)、逆に新郎新婦側も結婚式中止によるその他損害の賠償を会場に求めることはできない(会場としては追加の支払いを請求されることはない)」という決着方法が定められている、ということです。
ただ、契約時に「非常時の特則」等で別の取扱いが定められていたり、停電や施設損壊に際して会場と新郎新婦とで「ではこういう条件で延期することにしましょう」と合意できていれば、そちらの内容が法律に優先して適用されます。「危険負担」という民法上の規定は「当事者間でこうした場合の取扱いについて何も合意がなかった場合の取扱い」を定めたものである点に注意が必要です。
Q3.結婚式サービスの提供を行うこと自体は可能なのですが、台風直撃の予報を理由に、新郎新婦から前日になって「延期したい」と要望を受け、応じることになりました。この場合でも日程変更料を請求することは問題ないでしょうか?
A 法律上は問題ありません。
原因はなんであれ、結婚式サービスの提供が可能な中で、新郎新婦のご意向やご都合によって発生した「延期」であれば、原則として婚礼規約に沿って日程変更料を請求できます(なお「解約」の場合の解約料も同じ考えです)。
あとは事情を踏まえてお客様向けサービスとしてどう判断するか、という問題です。
Q4.Q2における「危険負担」の考え方と、Q3における「日程変更料を請求できる」という結論の分かれ目は何の違いによるものでしょうか?
A 結論の分かれ目は「不可抗力により結婚式サービスが提供できない場合か、そうでないか」です。
民法第536条規定の『危険負担』は「不可抗力によりサービス提供ができない場合」(台風による全館停電や施設損壊によって物理的に結婚式が開催できない場面はまさにこれに該当します)に適用されるのに対して、Q3の事例は「サービス提供は可能だが新郎新婦が延期を希望した場合」ですので、そこが大きく異なります。
Q5.台風による新幹線の「計画運休」によって参列できなくなった参列者が出ました。新郎新婦から「人数分の料理代を減額してほしい」と依頼を受けました。法的には減額をする義務があるのでしょうか?
A 減額をしなければならない法的な義務はありません。
私たちブライダル事業者は、契約された日時に、契約された人数の参列者をお出迎えし、契約されたサービスを提供することについては契約上の義務を負っていますが、「参列者が実際に参列するかどうか」まではコントロールできませんし、契約上の責任も負っていませんので、お気の毒ではありますが、会場側がその分を負担しなければならない契約上または法的な義務は認められないと考えます。
なお、当然ながら「サービスとして」代金の一部減額などの配慮をすること自体は何ら問題ありません。
Q6.台風による交通網の乱れで帰宅できない参列者が現れることを危惧する新郎新婦から「参列者のホテル代を会場が負担してほしい」と依頼を受けました。法的に対応する義務があるのでしょうか?
A これも先ほどの回答と同じで、会場側は「参列者がいつどのように帰宅するのか」までコントロールできませんし、契約上の責任も負っていませんので対応しなければならない義務はありません。
もちろん、こちらも「閉館時間まで雨宿りを認める」など「サービスとして」特例措置を講じることは問題ありませんが、新郎新婦や参列者から強制される性質のものではありません。
Q7.台風により敷地内の樹木が倒れて景観の一部が変更したことを理由に、施行後の新郎新婦から「期待していた通りではないから減額して欲しい」と依頼を受けました。それ以外に施行上の問題はありませんでした。法的に対応する義務があるのでしょうか?
A 基本的にありません。
自然災害という不可抗力により景観が変更したことに会場側の過失はありませんし、結婚式サービス自体は契約通り提供出来ていれば損害も生じていません。
会場側の樹木の管理が著しく杜撰であった、景観の変化が結婚式の価値を著しく下げるものだった等の特殊事例がない限り、原則として、減額に応じなければならない法的な義務は発生しません。
いかがでしたでしょうか?
台風等自然災害を巡る取り扱いでは「法律に基づく判断」が必要になってきますので、今回のメルマガの内容がお役に立てれば嬉しく思います。
なおBRIGHTでは2019年11月に「台風と結婚式」と題した動画解説を配信しています。
改めて掲載いたしますので、より詳しくお知りになりたい方はご活用ください。
前編:会場と新郎新婦の関係性 https://youtu.be/unjuwhxyHcY
後編:会場とパートナーの関係性 https://youtu.be/wnEKB6fZck0
Comments