【この記事は2021年3月31日現在のものです】
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【目次】 TOPICS 「選択的夫婦別姓」議論について知っておこう
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TOPICS
「選択的夫婦別姓」議論について知っておこう
前回のコラムで取り上げた「同性婚」と並んで注目が集まる「選択的夫婦別姓」を巡る議論について、婚礼業界に身を置く私たちだからこそ知っておきたい点を整理して解説します。
1.法律における現状は?
夫婦の姓については民法第750条で以下のように定められています。
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
つまり「結婚したら夫か妻のどちらかの姓にしなさいよ」というのが現状のルールで、夫婦で「別姓」のまま結婚する選択肢は与えられていません。
(なお、婚姻カップルの96%が「夫の氏」を選択している現状があります。)
これに対して、「結婚するけど別姓のまま維持したい」という選択肢を設けてもよいのではないか?という声があがっているのが『選択的夫婦別姓』を巡る議論です。
2.賛成論と反対論
これについては賛成論と反対論が対立しています。
各々の主な理由をまとめてみますと・・・
【賛成の理由】
(1)代々受け継がれてきた姓を変えたくないという希望には応えるべき
(2)姓を変えた方が「名前に蓄積された信用を失う」などの不利益が生じる
(3)姓を変えた方が各種の「氏名変更」手続きをする負担が生じる
(4)諸外国では「夫婦同姓」の強制はなくなっている ※
※少なくとも先進国の中では「夫婦同姓」以外の方法を認めていないのは日本だけというデータもあります。
【反対の理由】
(1)家族で同じ姓を名乗ることには社会的に重要な意味がある
(2)子供の姓をどうするかのルールが定まっていない
(3)「夫婦同姓」は日本の伝統である
などが挙げられます。
世論調査などでは【賛成】が増えてきていますが、根強い【反対】もあって国会では度々議論には上がるものの、まだ法律改正に向けた具体的な動きまでには至っていません。
3.日本の歴史上の「夫婦の姓」
反対理由の(3)に「日本の伝統」という意見がありますが、そもそも我が国における「夫婦の姓」はどのようなルールだったのでしょうか。
実は、明治時代になるまではすべての人に姓があったわけではなく、大名、公家、有力武将等一部の人にしか姓はありませんでした。
明治3年になって、はじめて一般庶民にも姓をもつことが解禁され、
明治8年には日本国民全員に姓をもつことが義務化されました。
そうなると当然ながら「結婚したら姓はどうなるの?」という疑問が湧いてきますが、これに対して当時の政府は
「結婚してもそれぞれ旧姓を名乗れ」
という指令を出しています(太政官指令)。
そう、なんと明治の初めには、わが国は『夫婦別姓の国』だったのです。
その後明治31年に我が国初の民法が施行されるにあたって、その頃日本社会に定着したといわれる「戸主制」という考え方に基づき、「結婚したら妻は夫の姓を称する」という「夫婦同姓」のルールが導入されました。
これが約120年前のことです。
そして時は流れ、日本は太平洋戦争に敗れ、米国の影響を受けて昭和22年に改正された民法において現行のルール、すなわち「結婚したら夫か妻のどちらかの姓にしなさいよ」というルールが導入され、今日に至っています。
4.裁判の概要
こうした歴史的背景を経てきた、我が国における「夫婦の姓」ですが、最近になって「選択的夫婦別姓を認めて欲しい」という観点からの訴訟がいくつか提起されています。
事実婚カップルが「夫婦別姓を認めないのは国の立法不作為だ」と訴えた裁判において、最高裁は2011年の判決で、
・ 夫婦同姓は「家族の一員であること」を対外的に表す機能がある
・ 夫婦の姓は男女いずれでも選べるので男女間の不平等があるわけではない
・ 夫婦別姓が認められないデメリットは旧姓使用の拡大で一定程度緩和される
などの理由で、カップル側の訴えを退けています。
ならば、と現在は「外国人と結婚した日本人は姓を変えるかどうか選択できるのに(戸籍法第107条に規定があります)日本人同士で結婚した場合だけ選択できないのは法の下の平等に反する」と、戸籍法という新しい視点からの裁判も提起されていますが、2019年には第一審が、2020年には第二審がいずれも請求を棄却しています(現在は最高裁で争われています)。
このように、現時点において、裁判所は「夫婦別姓の選択肢がないこと」について「違憲とは言えない」(「夫婦同姓でなければならない」と言っているわけではない点に注意が必要です。)という見解を示しています。
5.冷静な議論を
私は恥ずかしながら最近に至るまで、漠然と「夫婦同姓は日本の伝統」だと思っていたので、明治31年までは夫婦別姓の国だったと知ったときはかなり驚きました。
一方で「外国と違うから日本も変えよう」という一部賛成派の主張に対しては、「家族のカタチやあり方は国によって違って当然なので、単純に『外国がそうだから』で変えてしまってよいのだろうか?」という違和感(極端なことを言えば「一夫多妻制」が世界の潮流になったら日本も従うべきなのか?というと考えてしまいます。)も覚えたりします。
そんな逡巡を経て、夏目個人としては『条件的賛成』の立場をとっています。
結婚したいカップルに「姓の選択」がハードルになる場合がある(「家」を大事にする一人っ子同士の結婚など)以上、それはクリアにしていくべきではないかという基本的な考えを軸にしつつ、「子供の姓はどうするのか?」という点にしっかり国民的な共通認識を得ることが不可欠だろうと考えるのです。
この点については、
(1)婚姻届を提出時に子供の姓を決める
(2)出生届を提出する都度子供の姓を決める
などいくつか案が出されていますが、まだ統一的な案に集約されてはいないようです。
個人的にはここが最後にして最大の検討ポイントであろうと考えています。
以上の経緯を踏まえ、皆さんはどんな意見を持たれるでしょうか?
目の前のカップルだけでなく、将来生まれてくる子供たちの幸せも視野に入れた冷静な議論が進んでいくことを願っています。
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