【この記事は2021年9月6日現在のものです】
*************************************************************
【目次】 TOPICS 「契約書」のあれこれを学ぶ入門編 *************************************************************
日々の業務を見据えて知っておくとよい「契約書」についての知識を、Q&A形式でまとめます。
Q.フリーランスの事業者との間で新規に契約を締結しようと思うのですが、ぴったりくる契約書が手元にありません。そもそも契約するために契約書って必ず必要なのですか?
A.いいえ。日本の法律では「申し込み」と「承諾」の意思表示があれば契約は成立する、というのが大原則ですので、事業用定期借地契約などの例外を除いて、契約書がなくても契約は成立します。
Q.ではなぜ一般的には契約書を取り交わすのでしょうか?
A.主に3つの意味があると言えます。
1つは、契約書の作成を通じて、相互に合意内容を整理し、確認しあうことができます。
もう1つは、もし契約後に認識の違いが生じたときに、お互い契約書に立ち返って合意内容を確認することができます。
最後に、万が一争いになってしまったときに、裁判所に対して契約書を示すことで、自らの正当性を主張しやすくなります。
Q.では契約書を取り交わす上で、ハンコは必要なのでしょうか?
A.個人で契約をする場合は、本人直筆の『署名』があれば、捺印はなくても一般的に効力が認められます。ただ、会社や社団法人などの法人で契約する場合には、人間じゃない以上本人直筆の『署名』はできませんので、法人名と代表者名を記載した横に押印することで、意思表示の存在を証明するのが一般的です。
Q.今更なのですが、「署名」と「記名」、「押印」と「捺印」それぞれの違いを教えてもらえますか?
A.本人が直筆で名前を書くことを「署名」、それ以外にゴム印で押したりパソコンで打ったりする方法で名前を記すことを「記名」と言います。
そして「押印」と「捺印」はともにハンコを押すという意味では一緒ですが、「署名」には「捺印」、「記名」には「押印」を繋げて、「署名捺印」や「記名押印」と表現するのが一般的です。
Q.もうひとつ今更なのですが、契約書に押すハンコの種類って決まりがあるのでしょうか?
A.一般的には、『契約印』と呼ばれる印鑑を押印しますが、法的には「絶対これ」というルールはありません。
なお、運用面において最も証明力を高めたい時には、『印鑑証明の届け出をしている印鑑(実印)』で押して、同時に印鑑証明書を提出するという方法がとられます。
Q.契約書のタイトルについてお聞きします。「覚書」という言葉を聞きますが、「契約書」と何が違うのでしょうか?
A.実はタイトルに大きな意味はなく、契約内容が書かれた書面のタイトルを「契約書」とするか「覚書」とするか、はたまた「合意書」とするか「確認書」とするか、もしくはタイトルは何も書かないかによって、いずれも効果は変わりません。
ただ、一般的には、もともと存在した「契約書」の内容を一部変更したり、追加したりすることを記載する書面のことを「覚書」と呼ぶことが多いです。
Q.印紙税が発生する契約書やしない契約書があると聞いたのですが?
A.印紙税法という法律で「印紙税が発生する契約書」が指定されていまして、該当する契約について規定した書面には「所定の収入印紙を貼付して割り印する」という方法で納税をしなければなりません。
一般的には、成果物の制作と納品を目的とする「請負」契約(ブライダルでは、写真アルバムやオリジナルブーケについての契約が当てはまります。)は納税義務が発生し、成果物のない当日のサービスの提供を目的とする「準委任」契約(ブライダルでは、司会やヘアメイクについての契約が当てはまります。)には納税義務が発生しません。
ただ、これはあくまで一般論で、実際には契約書の中身に基づいて税務署によって判断されます(「準委任契約書」とタイトルになっていても、中身に請負契約の要素があれば納税義務が生じます。)ので、印紙税の要否が心配な場合は管轄の税務署に確認に行かれると確実です。
Q.電子契約書は効力として問題ないのでしょうか?
A.上記の通り、契約書を取り交わすこと自体はそもそも契約成立の必須の要素ではありませんので、電子契約書だから効力が弱まるなどということはありません。また、電子契約書には印紙税は課税されないというメリットもあります。
ただ、各サービスごとに運用のされ方が違いますので、「確実に当事者が合意した」という証明力が確保されるレベルにあるのかどうかは注意されるとよいかと思いますし、まだ「大切な契約は紙で」という意識は根強い(もちろんそれが悪いわけでは全くない)ので、取引先様の意向を伺いつつ利用するしないをご判断されてもよいと思います。
以上、いかがでしたでしょうか?
日頃のお仕事でよく使われる「契約書」についての基本知識をまとめてみました。
お役に立てていれば嬉しく思います。
Comments