BRIGHT NEWS vol.106 「フリーランス保護強化」へ来年法改正か。業界への影響を探る。

【この記事は2022年9月8日現在のものです】


*************************************************************

【目次】

TOPICS (1)『フリーランス保護強化』へ向けた法改正の動き *************************************************************

9月5日付日本経済新聞の報道によれば、政府は「フリーランスの保護」を目的に来年の通常国会に「下請法」の改正案を提出する方針とのことです。記事によればこの改正の内容は、ブライダル業界にもかなり大きな影響を与えそうです。 1.前提として  「下請法」とは、法律で定められた取引類型における事業者間取引において、発注主が(フリーランスを含めた)請負事業者に対して不利益を与えることがないようにするためのルールを定めた法律です。なお、ブライダル業界において「会場」事業者が「パートナー」事業者に対して業務を発注する形の取引は、ほぼすべてこの法律の規制対象となります。  実はもともとフリーランスも「下請法」によって保護される対象ではあったのですが、それには「発注主の資本金が1千万円超であること」が前提条件になっていました。つまり、「会場」事業者をはじめとする発注主の資本金が1千万円以下である場合には、「下請法」は適用されず、仮に同法で禁じられるような不利益が発生していても、フリーランスは同法による保護は受けられない現状がありました。  今般の報道によれば、来年の「下請法」改正により、フリーランスが請け負う場合に限って発注主側の「資本金1千万円」要件が撤廃される見込みとのことです。もし報道の通りの改正がされれば、ブライダル業界で働くフリーランスのあらゆる受注取引が「下請法」の適用対象となる可能性があります。 2.「下請法」ではどんなことが規制されているのか?  「下請法」は、一般的に立場の強い発注主側に下記のような義務を課しています。主なものを列挙します。 (1) 禁止事項の厳守  「下請法」が適用対象となる取引において、発注主の意思による「下請け代金の支払い遅延」や「下請け代金の減額」が禁止されます。また下請事業者に対する、おせちやディナーショーチケット等の「購入強制」(注:おせちやディナーショーチケットを「案内すること」が違法なのではなく、「強制的に買わせること」が違法です。)、「不当な経済上の利益の提供要請」(ブライダル業界においては、パートナーに全く利益のない形での「ブライダルフェアへの無償での協力要請」がこれに該当する危険性があります。)、「不当な給付内容の変更・やり直し」(ブライダル業界においては、一旦発注した業務を解約する際に解約料を支払わないケースがこれに該当する危険性があります。)等も禁止されます。 (2) 契約内容を記した書面の交付  「下請法」が適用対象となる取引において、発注主は取引内容を記した書面を下請事業者に交付する義務を負います。一般的には契約書がこれにあたりますので、言い方を変えれば、契約書を作成せずに業務を委託することが違法となります。 (3) 60日以内の支払いサイトの厳守  「下請法」が適用対象となる取引においては、発注主が下請事業者に代金を支払う期限を「最大60日以内」としなければなりません。つまり「当月分を翌月末までに支払う」という期間設定が限界で、「当月分を翌々月●日までに支払う」というルールは認められなくなります。  なお、発注主がこれらの規制に違反した場合において「下請事業者が同意したから」という言い訳は全く通用しないところに注意が必要です。また、「ブライダル業界では昔から当たり前だから」「何年も前からそういう運用だったから」といった個別の事情も考慮しないと、監督官庁である公正取引委員会の担当者は明言しています。 3.「下請法」に違反するとどうなるのか  発注主が「下請法」に違反した場合には50万円以下の罰金が課せられることがありますが、それ以上に影響が大きいのは「公正取引委員会のWEBサイトで数年にわたって勧告事例として公表されること」です。ホテル名や式場名が公にされてしまうため、世間的なイメージダウンにつながる恐れがあります。 4.ブライダル業界における対策とは  ブライダル業界には、 (1)ほぼすべての「会場」事業者と「パートナー」事業者との取引が「下請法」適用対象である、 (2)フリーランスとして働く人が多い、 (3)資本金1千万円以下の規模の事業者が多い という特徴があることから、来年の法改正で「下請法」の規制要件が緩和されると、「下請法を詳しく知らない」「慣れていない」ことを背景に、思いがけず法律に違反してしまう事例が続出するのではないかと危惧しています。  特に発注主となる「会場」側が対策として意識すべきこととしては、 1) 事業者間取引においては「契約書」を作成すること 2) この法律が定めている要件を備えた「契約書」のテンプレートを用意しておくこと 3) 禁止されている事項について社内で共有しておくこと の3点であろうと考えます。  ブライダルの現場は「会場」と「パートナー」とがタッグを組んで初めて成立します。「下請法」の運用が厳格化され、特に「フリーランスの保護」が強化される中で、お互いが気持ちよく働けるような体制の構築に向けた努力が必要だと考えます。