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クレーム対応で「法的知識」をどう活かすか?
いきなり質問です。
お客様からクレームを頂戴した際に、私たち事業者に「求められるもの」はなんでしょう?
え?
「誠意」?
はい、確かに「誠意」は大切です。
法務サービスを提供するBRIGHTでも「私たちはサービス業に身を置く者なのだ」という前提は充分理解していますから、杓子定規に「すべて法律で解決を図ろう!」なんて全く思っておらず、クレーム対応には「誠意」が必要であることは全く否定しません。
でも、「誠意」が通じない場合もありますよね?
「誠意」だけでクレーム対応がすべて解決したら誰も困らないですよね?
だからこそ「誠意」に加えて、クレーム事案が発生した時の対応に備えて法的知識も備えておくといざという時に対応が楽になりますよ、というのが「クレーム対応」に関してのBRIGHTの一貫したスタンスです。
そのスタンスに基づき、これまでBRIGHTは主に「法的にはこんな主張は認められるのか?」「返金額はどう考えるべきなのか?」という法的知識についての解説を繰り返してきました(5月14日に行われるオンラインセミナーでもこの辺りはしっかり解説します)。
しかし、今回のメルマガで取り上げるのは法的知識そのものではなく、皆さんが学んだ法的知識を「どう活用したらよいのか?」という点にフォーカスします。つまり、アウトプットの方法ですね。
以下は私夏目独自の考え方であるということはよくよくご理解をいただいた上でお読みいただきたいのですが、まずなにより「クレーム対応」のゴールを「お客様ご本人の納得を得ること」に置くべきではない、というのが私の持論です。
なぜなら、私たちはお客様の内面までコントロールすることはできないからです。「お客様ご本人の納得」をゴールにしてしまうと、どんなに合理的な提案を受けても納得できない方や、最初から納得する気のない方を相手にしたときには、ゴールの見えない泥沼の戦いを余儀なくされてしまうからです。
では何をゴールにすべきか?
私は「第三者から見て合理的な解決策の提示」こそをゴールに置いて対応を検討すべきと考えています。
つまり、対象のお客様ご自身が納得するかどうかではなく、目の前のクレーム事案を客観的に見た第三者の目から見た際に「企業側が合理的な解決策を提示している」と見えるかどうかこそが一番大事で、それを目指して検討すべきということです。
なぜならば、私たちはお客様ご本人の内面までコントロールすることはできない一方で、法的知識をベースにして、客観的に合理的と思われる提案をすることはできるからです。また、もしそれができればお客様がクレーム案件について弁護士さんや消費者センターに相談をした際に、それらの人たちから「会社側の提案には理があると思うよ」「これ以上争うより提案を受けた方がいいと思うよ」と説得してくれることが期待できますし(実際によくあります。)、万が一不幸にも訴訟になってしまっても、日本は法治国家である以上自らの主張が通る可能性が高まるからです。
その検討をする際に役立つ知識が、法的知識です。
そしてここで取り上げるのが、「その伝え方」です。
せっかく学んだ法的知識も、お怒りになっているお客様ご本人に対してそのままぶつけても上手くいきません。
たとえば、会場が施行の中でミスをしたことにお怒りのお客様との間で「返金の額」についてどうしても意見が合わない事例において、
「法律にも●●と規定されていますので、これ以上の返金はできません。」
と法的知識を直接自らの意見として伝えてしまうのは、お客様の怒りの火に油を注ぎかねません。
しかし、これを
「当社としては大変申し訳なく思い、また重要な問題だと受け止めているからこそ、お客様に対して法的にも適正なご提案をしなければならないと考え、外部の専門家に相談してみました」
と、あくまで「お客様のために」法律を調べてみたというスタンスを示した上で
「そうしたところ、専門家からは●●法●条により●●代の他に返金する法的義務はないというアドバイスを受けました」
と、法的知識を”自社としての見解”ではなく”外部専門家の見解”として紹介すると、いくぶんか受け手の印象は変わりますよね?
それに加えて、
「こうしたアドバイスはありましたが、当社はブライダル事業者として法律上の理屈のみで本件を解決するつもりはなく、専門家のご提案に加えて、せめてものお詫びの気持ちとして●●代に●●代を追加した返金をご提案することといたしました」
と、あくまで法的知識をベースにしつつも自社の最大限の「誠意」を加えての提案であることを告げ、
「これが当社としての最大かつ最終のご提案となりますので、何卒ご理解を賜りたくお願いいたします」
と持っていくという流れが、有効な「伝え方」のひとつとして考えられるのではないかと思います。
もちろんお客様のキャラクターや事例の特例によって、この言い回しが全て適しているかどうかは分かりません。
また、長年のご経験等を踏まえて「そうではない!」「こういう伝え方の方がいいのだ!」という異なるご意見をお持ちの方もおられるかもしれません。
ただ少なくとも私夏目の過去の経験によれば、上記のような形で「法律的にはここが上限なんですよ」という法的知識を”専門家の口”を介すようにして伝え、その上で「それを受けて当社はこの解決策を提案します」と持っていく方法は、「法律」という客観的な軸に沿った提案となる分、比較的お客様にも受け入れていただけるケースが多いので、参考のひとつとしてもらえたら嬉しく思います。
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