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BRIGHT NEWS vol.149 南海トラフ地震臨時情報の発表を受けて「巨大地震と結婚式」について再確認を


TOPICS

(1)『結婚式に巨大地震が発生した場合の法律関係』を巡る法律関係Q&A



「『南海トラフ地震臨時情報』が発表されたことを受けて何をすればよいの?」

「結婚式の直前や最中に巨大地震が発生したらどうするの?」

法律的な考え方を8つのQ&A形式でまとめました。是非ご参考になさってください。


Q1.気象庁より「南海トラフ地震臨時情報」が発表された中で結婚式を挙行することは問題ないのでしょうか?また演出内容を変更する必要はありますか?


A1.結婚式を挙行すること自体は何ら制約されませんし、演出内容を変更する義務もありません。

このたび気象庁より発表された「南海トラフ地震臨時情報」には【巨大地震警戒】【巨大地震注意】【調査終了】の3種類があり、今回は2段階目の【巨大地震注意】が発表されましたが、これは国民に何らかの行動を義務付けるものではありません(【巨大地震警戒】が出されると、地震発生後の避難が間に合わない人は1週間の事前避難をしないといけなくなります)。

したがって、結婚式の挙行を制約する法的な義務は発生しておらず、予定通り挙行することに法律上の問題は生じません。

また同様に「南海トラフ地震臨時情報」の発表を理由に演出内容を変更しなければならない義務も発生しませんし、逆に、新郎新婦の同意も得ずに演出内容を一方的に変更する行為(たとえばビーチで予定していた演出を屋内に変更する等)は契約違反の責任を問われるリスクが生じます。

一方で、【巨大地震注意】を発表することで気象庁は「地震が発生したらすぐに避難する準備」の徹底を呼び掛けていますので、各式場・ホテルにおいては、

・巨大地震発生時の避難誘導場所や方法の確認

・最低限の水、食料または医薬品等の確保と持ち出せる準備

等の「万が一に備えた準備」を進めておくことが望ましいと考えます。


Q2.結婚式の直前に巨大地震により「施設の損壊」が発生してしまい、物理的に結婚式の開催が出来なくなりました。この場合の法律関係はどうなりますか?


A2.原則として会場は受領済みの金銭を【返金】しなければなりません。

民法第536条には『危険負担』という制度が規定されていて、巨大地震などの「不可抗力」によって「サービスの提供ができなくなった時」には、新郎新婦はそのサービスの対価を「支払わなくてもよい(=請求を拒否できる)」とされています。

一般的な結婚式の場合には当日までに申込金や前払い金等はすでに支払われていますので、会場はこれらを新郎新婦に返金しなければなりませんし「新郎新婦による解約」でもないので解約料も請求できません。ただ一方で、会場の責任で開催が出来なくなった訳ではないため、新郎新婦側が費やした交通費や宿泊代、購入済みの引出物代等を賠償する義務は負いません。

つまり「会場としては新郎新婦から支払われた金銭は全額返金しなければならず、解約料等も請求できないけれども(会場はその点では大損ですが)、逆に新郎新婦側も結婚式中止によるその他損害の賠償を会場に求めることはできない(会場としては追加の支払いを請求されることはない)」という決着方法が定められている、ということです。

ただ、契約時に「非常時の特則」等で別の取扱いが定められていたり、会場と新郎新婦とで「ではこういう条件で延期することにしましょう」と合意できれば、(消費者契約法に照らして無効となるほど一方的に事業者有利の内容でなければ)そちらの内容が法律に優先して適用されます。「危険負担」という民法上の規定は「当事者間でこうした場合の取扱いについて何も合意がなかった場合の取扱い」を定めたものである点に注意が必要です。


Q3.結婚式の最中に巨大地震により「大規模停電」が発生してしまい、やむを得ず停電中は進行が中断し、その後再開し、予定されていたお料理やサービスは提供されて定刻にお開きとなりましたが、結果的に披露宴の時間が30分ほど短縮されてしまいました。新郎新婦は「短縮された分の会場費は返金して欲しい」とご希望ですが、返金する義務はありますでしょうか?


A3.原則として会場は【返金】する義務を負いません。

契約上のサービスが充分に提供されなかった場合(債務不履行)には、民法第415条に基づき、新郎新婦はそれにより生じた損害(提供されなかったサービス等)の賠償を請求することができます。

ただしこれは「事業者に故意や過失があった場合」に限られます。確かにこの事例において新郎新婦の望んでいたサービスが提供されていない時間帯が出現してしまいましたが、巨大地震の発生による大規模停電は一般的には「不可抗力」と言え、事業者に責任はありませんので賠償義務も発生しません。

しかし、もし中断したタイミングによって「お料理が全て提供できなかった」「予定していた花火を打ち上げられなかった」等と、単に時間が短縮されたのみならず具体的に提供されていないサービスが生じた場合はどうでしょうか?

このあたり法的な議論が出てきそうでして、部分的に2つ目のQ&Aで説明した『危険負担』が該当するとして、不可抗力により履行不能だったサービス分については返金を求められるという理屈も成り立ちそうで、裁判例がない中ではなかなか断定的な判断は難しいところです。

個別具体的な事情ごとに結論が分かれてきますので、そのような事態が発生した場合には専門家にご相談ください(もちろんBRIGHTへのご相談も大歓迎です!)。


Q4.結婚式の開催日を前に巨大地震が発生し、周辺地域に大きな被害が出ています。ただ幸いにして施設に被害はなく開催に支障はないので、会場としては予定通り開催するつもりですが、その方針自体は差支えありませんか?


A4.差支えありません。

大地震が発生しようと結婚式サービスの提供が可能なのであれば、原則としてそのまま開催という判断で差支えありませんし、逆に、新郎新婦の意向に反して会場側の独断で中止してしまうと契約違反の責任を問われかねません。

ただ、新郎新婦や参列者等の安全確保に向けたアナウンス(来場される際の交通機関の乱れ等についての注意喚起)等はしておかないと、後から事業者としての注意義務違反を問われる場合がありえますので注意が必要です。


Q5.Q4の事例において、新郎新婦が巨大地震の発生や「南海トラフ地震臨時情報」の発表による社会不安を理由に、前日になって「延期したい」と要望してきました。この場合でも日程変更料を請求することは問題ないでしょうか?


A5.法律上は問題ありません。

原因はなんであれ、結婚式サービスの提供が可能な中で、新郎新婦のご意向やご都合によって発生した「延期」であれば、原則として婚礼規約に沿って日程変更料を請求できます(なお「解約」の場合の解約料も同じ考えです)。

あとは事情を踏まえてお客様向けサービスとしてどう判断するか、という問題です。


Q6.巨大地震の影響による新幹線の運休によって参列できなくなった参列者が一部出ていまいました。新郎新婦から「人数分の料理代を減額してほしい」と依頼を受けました。法的には減額をする義務があるのでしょうか?


A6.減額をしなければならない法的な義務はありません。

私たちブライダル事業者は、契約された日時に、契約された人数の参列者をお出迎えし、契約されたサービスを提供することについては契約上の義務を負っていますが、「参列者が実際に参列するかどうか」まではコントロールできませんし、契約上の責任も負っていませんので、お気の毒ではありますが、会場側がその分を負担しなければならない契約上または法的な義務は認められないと考えます。

なお、当然ながら「サービスとして」代金の一部減額などの配慮をすること自体は何ら問題ありません。


Q7.巨大地震の発生による交通網の乱れで帰宅できない参列者が現れたため、新郎新婦から「参列者のホテル代を会場が負担してほしい」と依頼を受けました。法的に対応する義務があるのでしょうか?


A7.対応しなければならない法的な義務はありません。

これもA6.の回答と同じで、会場側は「参列者がいつどのように帰宅するのか」までコントロールできませんし、契約上の責任も負っていませんので対応しなければならない義務はありません。

もちろん、こちらも会場が「サービスとして」特例措置を講じることは問題ありませんが、新郎新婦や参列者から強制される性質のものではありません。


Q8.施行前日に発生した巨大地震により敷地内の樹木が倒れて景観の一部が変更したことを理由に、施行後の新郎新婦から「期待していた通りではないから一部返金して欲しい」と依頼を受けました。それ以外に施行上の問題はありませんでした。法的に対応する義務があるのでしょうか?


A8.基本的にありません。

巨大地震という不可抗力により景観が変更したことに会場側の過失はありませんし、結婚式サービス自体は契約通り提供出来ていれば損害も生じていません。

会場側の樹木の管理が著しく不足していた、景観の変化が結婚式の価値を著しく下げるものだった等の特殊事例がない限り、原則として、減額に応じなければならない法的な義務は発生しません。


いかがでしたでしょうか?

なお、2つ目のQ&A以降の内容は「巨大台風」をはじめとした他の天災地変の場合でも基本的に同じ考え方となります。正月から能登半島沖の巨大地震から始まった2024年、災害の発生に備えながらも新郎新婦に幸せを届けていきましょう!

(Q&A監修:BRIGHT増渕勇一郎弁護士)


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