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(1) 『どこからがカスハラなのか?』厚労省が示す判断基準とは
厚労省は令和4年に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を発表し、顧客から「過剰な要求」や「不当な言いがかり」等の悪質なクレーム(=カスハラ)を受けた場合には、毅然とした対応と共に、企業として対応する従業員を守るよう呼びかけを行っています。
しかし、ブライダルに従事する皆様からは
「どこからがカスハラなのかの判断が難しい」
「カスハラかどうかを誰が判断するのかが分からず困っている」
「カスハラをしてくるお客様に対してどう伝えればよいのか分からない」
というお声を多数いただきます。
そこで、今回のメルマガでは「厚労省が示すカスハラ判断基準」を説明するとともに、カスハラ顧客への対応のあり方について提言いたします。
(1)厚労省が示す判断基準
厚労省が「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」において示す「カスハラ」の定義は下記の通りです(同マニュアル7P)。
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの
つまり、
1) 要求の内容に妥当性がなく
2) 要求の手段・態様が社会通念上不当なもの
であってスタッフが働きづらくなる行為が「カスハラ」であると定義づけられています。
また同マニュアルでは具体例もいくつか示されていて、これをブライダルの現場に置き換えて例示すると、まず1)については
◆ 些細なミスに対する過剰な返金の要求
◆ 契約当事者ではない者(たとえば両親や参列者)からの要求
が当てはまりますし、2)については
◆ 脅迫や暴言等の精神的な攻撃や威圧的な言動
◆ 執拗な電話等での要求の繰り返し
◆ スタッフ個人に対する誹謗中傷
などが該当することになります。
なお2)について補足すると、上記例示したような言動については「いくら要求の内容が妥当であったとしても」(注:ここが超重要です)カスハラになりえますし、行き過ぎれば犯罪となるものです。
裏返せば、いくら事業者側に落ち度があったとしても(=上記1)の要件を満たさなくても)、上記2)で例示したような言動について程度が激しいものである場合は、悪質性が高いものとして「カスハラ」と認定される可能性があります。
(2)誰が判断するのか、どう伝えるのか
では「これはもはやカスハラでは?」という事案に直面した際に、誰がそれを判断し、顧客に対してどう伝えるべきでしょうか。「お客様商売」である私たちにとってはここが悩ましいところですよね。
まず「誰が判断するか」については、最終的には裁判所が判断することになりますが、すべてのクレーム案件が裁判に発展する訳ではありませんので、まずは(必要に応じて外部の法律専門家の意見を聞きつつ)「事業者が判断をする」以外にあり得ません。
もちろんそれが一企業の完全な独断によるものでは説得力を欠きますが、厚労省のマニュアルに照らして「この条件を満たしているか否か」という観点でカスハラかどうかの判断をし、「カスハラである」と判断をした際には「顧客対応から従業員の保護」へ対応を切り替えていくという姿勢であれば、それは充分に説得力のある企業姿勢であると言えます。
次に「どう伝えるか」については、私見とはなりますが「厚労省のマニュアル」を前面に出した伝え方が効果的だと考えます。
たとえば下記のような伝え方が考えられます。
「厚労省が示した基準によれば、お客様の言動はカスハラに該当しうるもの(面と向かって「カスハラ」と言いづらければ「いささか問題が認められる言動」等への言いかえも可)だと判断せざるを得ません。その点是正していただけるようならば引き続き誠実に対応してまいりますが、是正していただけない、または再度そのような言動をされた場合には、当社としてはこれ以上の話し合いには応じず、厚労省のマニュアルに沿った対応に切り替えます」
つまり「一企業である当社の判断」ではなく、「厚労省の示した基準に基づいて判断していること」「厚労省の示すマニュアルに沿った対応をすること」を前面に出すことで、こちらの心理的にも幾分伝えやすくなるでしょうし、相手に対しても説得力が増すと考えます。
厚労省が示す「カスハラ対策」のポイントとしては
◆ いくら事業者側に落ち度があってもカスハラは許されない。
◆ カスハラに直面したら顧客対応より従業員保護を優先しなければならない。
という2点に集約されますので、私たち事業者としてはこれらの視点からカスハラ顧客が現れた際の対応方法を見つめ直す必要があると考えています。
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