BRIGHT NEWS vol.84 クロークで預かった荷物が壊れていた?その時どうなる?

【この記事は2021年7月30日現在のものです】


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【目次】 TOPICS 「クロークで預かった荷物が壊れていた」その時どうなる? *************************************************************

TOPICS 「クロークで預かった荷物が壊れていた」その時どうなる? 「クロークにノートPCを預けていたら、壊れて戻ってきた!」 「クローク内以外で壊れるはずがない。弁償してくれ!」 参列者からこんなクレームが寄せられた場合、皆さんはどう対応されていますか? 今回は、ホテルや式場で発生しがちな『預かった荷物が毀損した事例』を巡る法律の規定をご紹介いたします。 まず、私たち事業者が参列者等から荷物を預かる場合の責任については、商法にこんな規定があります。 第595条(受寄者の注意義務) 商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもって、寄託物を保管しなければならない。 これは、事業者が参列者等から荷物を預かる場合には、それが無料サービスであろうとなかろうと、「プロとしてそれを慎重に取り扱う注意義務」を負いますよ、という内容です。 本来「報酬を得ずに預かる場合」はそこまで重い義務は負わないことになっている(民法第659条)のですが、「預かる側が商人(事業者)の場合」に限って、商法は報酬の有無に関係なく重い注意義務を負わせています。まずは、私たちは参列者等から荷物をお預かりする際には重い注意義務を負っているということを認識しましょう。 その上で、商法は「結婚式場等が預かった荷物が壊れてしまった場合」についてこのように規定しています。 第596条(場屋営業者の責任) 1 旅館、飲食店、浴場その他の客の来集を目的とする場屋における取引をすることを業とする者(以下この節において「場屋営業者」という。)は、客から寄託を受けた物品の滅失又は損傷については、不可抗力によるものであったことを証明しなければ、損害賠償の責任を免れることができない 2 客が寄託していない物品であっても、場屋の中に携帯した物品が、場屋営業者が注意を怠ったことによって滅失し、又は損傷したときは、場屋営業者は、損害賠償の責任を負う。 3 客が場屋の中に携帯した物品につき責任を負わない旨を表示したときであっても、場屋営業者は、前2項の責任を免れることができない。 これだけ読んで「あ~そういうことね」と理解した方、法律のセンスあり過ぎです!笑 慣れていないといきなり法律の条文を読んでも分かりづらいので、結婚式場(ホテルやレストランでも同様です。)に置き換えて「意訳」しますね。 第596条(結婚式場事業者の責任)※意訳バージョン 1 結婚式場事業者は、参列者等から預かった荷物の滅失又は損傷については、事業者から不可抗力によるものであったことを証明しなければ、必ず損害賠償責任を負う。 2 参列者等が預けていない荷物であっても、施設内にあった荷物が、事業者の不注意で滅失又は損傷したときは、事業者は損害賠償の責任を負う。 3 事業者が「施設内での荷物の紛失や損傷は責任を負わない」とルールを規定していても前2項に規定された責任は免責されない。 いかがでしょうか? 「不可抗力」とは「必要な注意をしても防ぎようがないこと」を言いますので、預かっていた荷物が無くなったり、壊れたりした場合には、事業者は「それが防ぎようがないことだった」と証明しない限りは賠償責任を負うと規定してあります。 かなり厳しいですよね。 では、クロークで預かっていた荷物が壊れていたら、常に、絶対、全て事業者の責任となるのでしょうか? 答えはNOです。 商法第596条第1項は「参列者等から預かった物品が滅失又は損傷した時」について規定しているのであって、当然のことながら「預かった時点で壊れていたもの」や「返した後に壊れたもの」は対象ではありませんつまり「クロークで預かっている間に壊れたもの」について規定した条項なのです。 したがって、結婚式場側で確認をした結果、クロークでの受け渡しや保管に不備はなく、預かっている最中に壊れる要素がないと判断した場合には、いかに商法第596条の条項があろうと 「再度確認をいたしましたが、当会場の対応に不備があったとは認識しておりません。」 「クロークでお預かりしている最中に壊れたという証明がない限り、賠償責任は負いかねます。」 と「賠償しない」方向で回答しても差支えないわけです。 もちろん、この回答に納得してもらえない場合も充分想定されまして、もしこれに対して参列者側が 「そんなはずはない!クロークで預かっている最中に壊れたのだ!」 と反論してきた場合は、どうするのでしょうか? 実は、こうしたケースで事実を証明する責任(法律上は「立証責任」といいます。)は責任を追及する側、つまり参列者側にあるというのが法律の基本的な考え方となります。参列者側が「クロークで預かっている最中に壊れた」ということを証明する義務を負うのです。 まとめると、 クロークで荷物を預かる上では「プロとしてより慎重に取り扱う注意義務」を負いますが、一方でこれは「何か事故があったらなんでもかんでも責任を負う」ことではありません。 「こちらに対応の不備はない」「クローク内で壊れたわけではない」と認識した場合には、堂々とそれを主張して問題ありませんし、それが不満であれば「参列者側こそが事業者の対応の不備を証明しなければならない」というのが法律の考え方であると言えます。 いかがでしたでしょうか? ちょっと肩の荷がおりた気がしませんか? 加えてさらに知っておくと得な情報をお届けします。 商法第597条にはこんな規定もあります。 第597条(高価品の特則) 貨幣、有価証券その他の高価品については、客がその種類及び価額を通知してこれを場屋営業者に寄託した場合を除き、場屋営業者は、その滅失又は損傷によって生じた損害を賠償する責任を負わない。 これをブライダルの現場での対応に当てはめると、 スタッフが荷物を預かる際に「貴重品はございますか?」と声をかけて、参列者等が「ありません」と回答または何も答えなかった場合には、もし高価な物品(現金等の他、ノートPCも該当すると考えられます。)が入っていて、それが紛失または壊れたとしても、その存在を聞かされていなかった事業者側は責任を負わない、という条項なのです。 もちろん、こうした事故を起こさないような体制を構築するのが一番なのですが、加えて「貴重品はございますか?」という声がけを徹底することがいざという時にこんな法的な効果を導き出すということも是非覚えておいてください。 以上、現場で頑張るスタッフの皆様へ心からエールの気持ちを込めて日常よく現場で行われている「クローク業務」における耳寄りな情報をまとめてお届けいたしました。 お役に立てていれば嬉しく思います! (文責/BRIGHT代表 夏目哲宏 監修/BRIGHT 増渕勇一郎弁護士)