BRIGHT NEWS vol.98 緊急!コロナ新規陽性者急増に伴う「確認事項」

【この記事は2022年1月7日現在のものです】


*************************************************************

【目次】 TOPICS 新規陽性者数急増!改めて押さえる「コロナと結婚式」の考え方 *************************************************************


新年早々残念なニュースですが、再び新型コロナウイルスの新規陽性者数が急増しており、沖縄県、山口県および広島県を対象として、「まん延防止等重点措置」が発出されることが正式に決定されました。期間は1月9日から31日までです。

今後春先に向けて挙式・披露宴を控える新郎新婦の気持ちを思うと言葉もないですが、私たちブライダル事業者としては、今後不幸にも感染の拡大が続いた場合の準備を進めていく必要があると考えます。 そこで、約2年前から発信しております「コロナと結婚式」についての法的な観点からの基本的な考え方を、最新情報を交えて整理いたします。 1.「コロナ不安」はキャンセル料免責?最新情報もチェック 2020年の夏頃から一部で問題となっていた「『コロナ不安』を理由にしたキャンセルの場合には、キャンセル料は不要なのではないか?」というテーマが、このたびの新規陽性者数急増により再燃してくる可能性があります。 このテーマについては、日弁連の消費者被害対策委員会が『コロナ不安』を理由にした結婚式のキャンセルは(ほぼ一律に)「キャンセル料不要」というかのような見解を発表(下記参照)する一方で、 ★新型コロナウイルス消費者問題Q&A★ https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/news/2020/topic2_4.pdf 法務省は「たとえコロナが理由であれど原則としては契約書の通りキャンセル料は発生する」という見解を示すなど、各方面から「コロナと結婚式」を巡って様々な意見が表明され、混乱が見られました。 ★法務省のリリース★ https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00022.html そうした経緯やその後の最新情報をうまくまとめた情報源として、私夏目自身も取材対象となった下記のNHKの記事が参考になります。 結婚式 コロナ禍でキャンセル 裁判も…支払いどうする?|NHK事件記者取材note この記事の中では、キャンセルした新郎新婦に「キャンセル料の支払い義務」を認める裁判例や、それを法的な観点から肯定する元裁判官で民法を専門とする大学教授のコメントも紹介されています。 これを読んでいただければお分かりの通り、今、司法の場では「『コロナ不安』を理由としたキャンセルでも、キャンセル料の支払い義務は免責されない」という見解に集約されつつあると言えそうです。

2.なぜ法的に『コロナ不安』が理由でもキャンセル料は免責されないのか? 「コロナと結婚式」についての、法的な考え方を今一度整理します。 そもそも、新郎新婦と会場とは、両者の間で結婚式の契約が成立した時点から、お互いに「契約を守らなければならない」という法的な義務が発生します。そして、もし一方がこの契約に違反した場合には、それにより相手に発生した損害を賠償する義務を負います。 新郎新婦が「一度契約した結婚式をキャンセルすること」も契約違反の一例ですので、キャンセルした新郎新婦には、法律上、キャンセルにより会場に発生した損害を賠償する義務が生じます。 ただ、結婚式のキャンセルにより会場に発生した損害がいくらになるかは、なかなか算定が困難です。そんな時のために、民法は第420条第1項で「損害賠償の金額は予め決めておくことができる」と規定しており、それを根拠に、全国ほぼ全ての会場が婚礼規約において『キャンセル料』という形で損害賠償額を決めているのです。 したがって、婚礼規約に同意した上で契約を締結した新郎新婦が結婚式を解約した場合には、法律上も、契約上も、『キャンセル料』を支払う義務を負うのです。 (なお、『キャンセル料』の水準が不当に高額にならないようにと消費者契約法第9条による制限がありますが、それについては今回は触れません。) 一方で、民法は「新郎新婦も会場もいずれも悪くないやむを得ない事情」によって「結婚式をしようにもできない場合」(法律上は「不可抗力による履行不能」という言い方をします。)には、新郎新婦は『キャンセル料』をはじめ、一切の金銭を会場に対して支払う必要はありません(=免責されます)よ、という規定も設けています。 これが「危険負担」と呼ばれる規定です(民法第536条第1項)。 先ほど紹介した日弁連の消費者被害対策委員会などは、『コロナ不安』を理由に新郎新婦が結婚式をキャンセルする行為がこの「不可抗力による履行不能」にあたり(またはそれに近い状態にあり)「危険負担」が適用される場面であるかのような論理をもって、キャンセル料の支払い義務を負わない、という趣旨の主張をしていました。 しかし、私たちBRIGHTの考え方としては、「危険負担」が適用される前提である「履行不能」な状態とは、「やろうとしようにもどうにもできない状態」を指すところ、2020年からのコロナ禍でのブライダル業界を振り返ってみれば、 (1)緊急事態宣言下であっても結婚式場に対して使用停止の要請は出されず、また結婚式自体に対しても開催自粛の要請は出されなかった (2)経済産業省も関与して『業界ガイドライン』が示され、業界を挙げて感染予防に取り組んできた (3)なにより、数は減少したとはいえ実際に挙式・披露宴が開催されてきた という3点の事情から、少なくとも「やろうとしようにもどうにもできない状態」とは言えないこと(それはつまり「履行不能」な状態ではないこと)は明らかであるから、法的には「危険負担」は適用されないものと考え、主張してきました。 この主張がBRIGHTの独りよがりな内容ではないことは、先ほどのNHKの記事をご覧いただければご理解をいただけるものと思います。 こうした理由から、『コロナ不安』で挙式・披露宴の開催の是非を悩まれる新郎新婦には心から同情を禁じ得ないものの、自らの意思でキャンセルをされた際には、法律上、または契約上の理屈からは「キャンセル料の支払い義務を負う」という結論に至るのです。

3.今、ブライダル事業者が「備えておくべきこと」とは? 大切なのは、上記のような法律上の「理屈」を受けて、「それでは私たちの会場は、新郎新婦にどう向き合うのか?」という方向性を、今こそ改めて決めておくことではないでしょうか。 上記の通り、法律上や契約上の理屈から、『コロナ不安』を理由にキャンセル(または日程変更の場合でも同じです)が発生した時に、会場がキャンセル料を減免しなければならない義務はありません。 その大原則は前提にしつつも、一方でコロナの感染拡大に何ら落ち度のない新郎新婦の置かれている状況を前に、「私たちは新郎新婦にどこまで手を差し伸べるべきなのか」を決定するのは、個々のブライダル事業者である皆様ご自身です。 「やはり徹底してお客様に寄り添っていこう。キャンセルの場合は実費分のみ、日程変更であればご負担なしで応じていこう」 というように、法律上の理屈とは異なる方針をとられる事業者さんがおられても、当然ながらそのご判断は尊重されるべきだと思います。 一方で 「コロナが始まった頃とは違い、今のお客様はコロナの存在を前提に契約されており、万が一の場合でもキャンセル料はいただくことは合意済みなのだから、やはりその通りご請求していこう」 というような、法律上、契約上の理屈に沿った方針をとられる事業者さんがおられても、何ら批判されるべき話ではないと思います。 大切なのは、今後の万が一の感染拡大に備え、「私たちはどう対応するのか」を、今、改めて明確に決めておく、ということだと考えます。それこそが新郎新婦の不安を払しょくし、満足にも繋がるのではないでしょうか。 今般の感染の拡大が大ごとにならないことを切に願うばかりですが、もし上記の解説が、今後に備える事業者の皆様のお役に立つことができればとても嬉しく思います。