ホテルや結婚式場(以下「会場」といいます。)において提供される結婚式サービスは、通常の場合、会場が予め提携する司会、装花、写真撮影、映像製作、着付け、ヘアメイク等の事業者に対して個別の業務を外注し、手配する図式で成り立っています(以下、会場が外注する提携先事業者を「提携パートナー」といいます。)。また、婚礼衣裳等の一部の商品またはサービスについては、会場が直接外注するのではなく、会場から顧客である新郎新婦に、予め提携している事業者が紹介され、新郎新婦がその中から事業者を選択し、直接契約が締結される形が一般的です(以下、会場が直接外注するわけではない提携先事業者を「外部提携パートナー」といいます。)。
これに対し、顧客である新郎新婦の希望を受け、該当する結婚式において、提携パートナーや外部提携パートナー「ではない事業者」による商品やサービスの提供を受け入れることを、業界用語で「持込」と呼び(以下、会場と提携関係のない事業者を「持込事業者」といいます。)、一般的な会場においては、従前から①これを禁止するか、②「持込料」等という名目で追加費用の支払いを顧客に求める等、何らかの規制をかけてきました。
この「持込」規制については、一見すると「顧客の自由度を奪うもの」とも捉えられうるため、従前から顧客と会場との間で争いになりやすいテーマでしたが、2018年に入って、ブライダル業界の外から様々な指摘を受けるようになってきました。
まず1月中旬には、適格消費者団体である公益社団法人全国消費生活相談員協会が札幌、東京、大阪の3か所の同協会事務所に、「ブライダル関連 トラブル110番」なる電話相談窓口を臨時開設しました。
公益社団法人全国消費生活相談員協会のWEBページ
http://www.zenso.or.jp/information/%e6%9c%aa%e5%88%86%e9%a1%9e/3955.html
同協会が作成したチラシには、トラブルの1例として「外注カメラマンが禁止されていることを契約後に知った。契約書にも書いてない」という文言が明記されており、同協会としては「持込」規制を巡るトラブルを想定していることが見て取れます。
公益社団法人全国消費生活相談員協会の公開するチラシ
http://www.zenso.or.jp/wp-content/uploads/ブライダルピンク修正2.pdf
そして同月30日付の日本経済新聞夕刊(東京版)では、「挙式持ち込み料、高い?相談多数『契約前に交渉を』」と題した、「持込料」について批判的に捉えた記事が大きく掲載されました。
ブライダル業界特有の慣例とも言えるこの「持込」規制が、夕刊とはいえ、全国紙である日経の記事で批判的に報じられることの影響力は無視しえず、我々ブライダル事業者としては、これを機会に「持込」規制について、改めて考えてみる必要があるでしょう。
そこで、本稿では以下の各回に分けて、この「持込」の問題について考えていきます。
第2回 日経はどう報道したのか
第3回 「持込」規制の目的は何か
第4回 消費者契約法第10条に違反するのか
第5回 独占禁止法に抵触するのか
第6回 顧客の不満の原因はどこにあるのか
第7回 「持込」規制に合理性はあるのか
第8回 新たな設計のあり方についての提言
第9回 ブライダル事業者が留意すべき点
終盤には、現状多くの会場で採用されている「追加請求型持込料」と異なる形式の提言もご用意しました。長文ですがどうぞ最後までお読みください。
第1回 おわり