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よかれと思って「個室で契約」したらそれを理由に取消し可能?
このメルマガでも何度も解説してきましたが、「消費者契約法」という私たちブライダル事業者にとってはやっかいな法律が存在します。
この法律は、まるで新郎新婦等の消費者を一律に「守ってあげなければならないかよわき子羊」に、そして私たち事業者を一律に「規制しないと子羊に悪さをしかねない狼」にそれぞれ見立てているかのように、消費者には権利を付与し、事業者には義務を課して「公平な取引」を実現しようとするもので、これまでブライダル業界においては『適正なキャンセル料水準』を巡る問題等で何度も直面してきました。
昨年6月の「消費者契約法」の改正点の中で、新郎新婦等の消費者に『「退去困難な場所で締結した契約」の取消権』が新たに付与された件(同法第4条第3項第3号)について、1~3月に各地で開催したセミナーにおいても問い合わせが非常に多かったこともあり、改めて注意喚起の意味も込めて解説いたします。
具体的な規制の内容は、
事業者が消費者に「これから契約についてのご案内(勧誘)をしますよ」と告げないまま「任意に退去するのが困難な場所」に同行し、その場所で締結した契約については、消費者は後から取消できることとして、消費者を保護するものです。
ブライダルの現場においては、打合せサロンが混みあっているような場合や新郎新婦が契約内容について詳細な説明を求めた場合等には、会場側が「よかれ」と思って静かな個室を用意して、そこで契約の説明や手続きを行うことは珍しいことではありません。これはむしろ「新郎新婦のことを思って」の手配ですし、本来法律もブライダル事業におけるそうした場面を規制しようとしてこの条項を設けているわけではなく、意図的に”監禁”状態を創り出して強引に契約を迫ろうとする悪徳事業者を対象とした規制です。
ただ、昨今、ごく一部のケースではありますが、自らの都合により解約をするにも関わらず、なんとか理屈をつけて解約料の減額または免除を求めてくるお客様が存在します。また、もっとたちが悪いと思うのですが、そういう強引な主張を発信または助言するかのような”消費者系”の専門家や団体も存在します。
そんな彼らにとってみると、上記の規定は解約料の支払いから免れるための格好の「言い訳」になり得る現実があります。
つまり、会場が「よかれ」と思って静かな個室を用意してそこで契約に至ったという事情があった場合に、後から「新郎新婦は容易に退室できない環境に連れ込まれて契約をさせられた!」等と主張し、「だから取消しができるはずだ!」(注:取消しが認められれば解約料の請求はできません。)という理屈で解約料の支払い義務がないことをアピールしてくる、という流れが(もちろん全体から見たら少数ではありますが)想定出来てしまうわけです。
そのため会場としては、万が一にもこのような『詭弁』を招かないためにも、「そのような主張ができないような環境作り」に配慮が必要となります。
具体的には2つの対策があり得ます。
まず1つは、個室にお連れする際には「これから契約の案内をして、お客様がご希望であればそのまま契約手続きに移行しますよ」ということを確実に伝えることです。条文上「当該消費者に対し、当該消費者契約の締結について勧誘をすることを告げずに」個室等で勧誘した場合に上記の取消権が発生することになっているため、逆に言えば事前にそれを告げておけば取消権は発生しないわけです。
もう1つは、個室を使う場合でも扉を開けておいたり、お手洗い等での退室の要否を確認したりと「任意に退去しようと思えばいつでもできる」環境を創っておくことです。プランナーがついつい契約の説明に一生懸命になってしまい、気づけば図らずも”監禁”みたいな環境になっていた・・・ということがないよう注意が必要です。
このメルマガをじっくり読んでくださるような「健全なブライダル事業者さん」にとっては「え?そこまで配慮しなければならないの?」と思われるでしょうが、このように法律が改正されてしまった以上は(出没頻度は1%以下であっても)万が一「そこを突いてくる顧客または”消費者系”専門家や団体」が出現した場合を備えて対策を講じておくことが有益と考えます。
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