申込金の支払い期限と「クーリングオフ」

申込金の支払い期限と「クーリングオフ」


第●条 申込金の支払い期限

 お客様は申込書を当社に提出した後●日以内に、所定の金融機関口座に申込金をお振込みください。なお期限までにお振込みをいただけない場合には、当社にてお申し込みを失効させていただく場合がありますのでご注意ください。

 

 多くの会場で使用されている「婚礼規約」では、「申込金の支払い」を契約成立の要件としつつ、その支払い期限を設定しています。このように期限を設けておかなければ、申込書を提出した後にちっとも申込金を支払ってくれない新郎新婦がいた場合、会場側はずっと「申し込みはされたけど契約は成立していない」という中途半端な状況に置かれ、別の新郎新婦への紹介もしづらくなってしまいますので、当然のルールだといえるでしょう。


 一方で一部の消費者団体などから「結婚式の契約においてもクーリングオフ条項を追記すべきだ」と指摘されたり、新郎新婦からも「クーリングオフ条項はないのですか?」と質問されたりするケースがあります。


 そもそもクーリングオフとは、消費者が事業者との間で一旦契約をした後であっても一定の期間内であれば無条件で(ノーペナルティで)解除できるとする制度で、「訪問販売」や「電話勧誘販売」など一部の取引形態において特定商取引法で規定されているほか、宅地建物取引、保険契約やゴルフ会員権契約などについて各々の規制法において規定されています。


 特定商取引法において「結婚情報提供」に関する一部の取引にクーリングオフ条項の設置が義務付けられていることもあり、よく「結婚式の契約にも同条項が必要ではないか」と誤解されるケースの存在を耳にしますが、実は、結婚式の契約においてクーリングオフ条項の設置は法的義務ではありません。

大事なのでもう一度言いますね。法的義務はありません。クーリングオフ条項を設けるかどうかは、完全に会場側の判断です。


 なお、もしクーリングオフ条項を追加する場合の例文は


第●条 クーリングオフ

 お客様は契約成立後であっても、成立日の翌日から●日以内であれば本契約を解除することができ、その場合に限っては解約料の支払い義務は発生しません。


などが考えられます。


 では、法的義務はないとはいえ、一部の消費者団体はしきりと「クーリングオフ条項の設置」を求めている現状があります。結婚式会場側は婚礼規約において「クーリングオフ条項」を設置しておくべきなのでしょうか?


 この点私は以下の3点を根拠に、否定的な意見をもっています。


1.上記の通り、多くの会場は婚礼規約において申込日から一定期間を設けて申込金の支払期限を設定し、申込金が支払われた時点で契約成立としています。これにより新郎新婦は申し込み後も一定期間「やっぱりやめた」と言える時期が存在し、実質的にはクーリングオフに近い保護が与えられています。


2.この実態の中でさらにクーリングオフまで認められてしまえば、会場側はかなりの長期間にわたって「契約が成立しないかもしれない」「解除されてしまうかもしれない」という不安定な立場に立たされてしまいます。


3.またクーリングオフ条項の存在が甘えとなり、「契約を締結する」という行為への認識の重みが会場側も新郎新婦側も軽くなってしまうことを危惧します。これにより、接客の現場で「とにかく署名だけさせよう」または「とりあえず署名だけして帰ろう」と、契約内容をしっかり説明または検討する空気がなくなり、結果的に無理な即決を強いる事例や契約を巡るトラブルが増加してしまう危険性があるように思います。


クーリングオフ条項の設置は法的な義務ではないこと、そして設置することが新郎新婦にとってプラスばかりではないことを踏まえ、各会場においてあるべき姿をご検討ください。