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年末のおせち。どこまでが「強制購入」に該当するのか?
ここ最近、BRIGHTから関連するテーマを取り扱うメルマガを発信する度に、本年11月1日から全面施行される「フリーランス保護法」についてのご質問が多く寄せられています。
その中でも集中するのが、「フリーランス保護法」にて禁止されている『ホテル・式場等から取引パートナーへの「おせち」や「ディナーショーチケット」の強制販売』について、どこからが強制になるのか?と、その判断基準を問うというとってもデリケートなテーマです。
今回のメルマガではそこに焦点をあわせて解説します。
まずは前提です。
「フリーランス保護法」の施行を待たずとも、そもそもすでに施行されている「下請法」においても、ホテル・式場等が取引パートナーに対して「おせち」や「ディナーショーチケット」等を強制的に購入させることは禁止されています(全く同じ禁止事項が「フリーランス保護法」にも設けられています)。
なお、「下請法」の規制対象となるのは法律上の要件を全て満たした一部の取引のみに限られるのに対して、「フリーランス保護法」においては取引パートナーが1)個人事業主、2)ひとり社長の会社であれば一律に規制が及ぶことになるため、11月1日以降はこの禁止事項が適用される取引が一気に拡大することが見込まれます。
では、法律はどこからが強制と定めているのでしょうか?
この点、公正取引委員会は「下請法」の解説において『強制販売』に該当する場面、つまり違反行為となる場面として下記のような例を示しています。以下、ブライダル流に意訳してご紹介します。
『ホテル・式場等が、婚礼の施行に係る司会進行、美容着付け、音響操作等の実施を委託している下請事業者に対して、委託内容と直接関係ないにもかかわらず、支配人又は発注担当者から、おせち料理、ディナーショーチケット等の物品の購入を要請し、あらかじめ従業員又は式場等ごとに定めていた販売目標数量に達していない場合には再度要請するなどして購入させること。』
お分かりいただけましたでしょうか?
ここから読み取れることは以下の通りです。
まず、ホテル・式場等が取引パートナーに対して「おせち」や「ディナーショーチケット」をご案内したり、実際に販売すること自体は違法でもなんでもありません。この点は誤解のないようにしてください。
ただし、取引パートナーから発注の連絡がなかったり、一度断られたり、または購入する数量を調整したりしたにも関わらず、後から仮に販売ノルマに未達であったからといって「再度要請して」販売することは『強制』に該当するとされているのです。
つまり、公正取引委員会が示している『強制販売』の基準とは、
・「おら!買え!」と胸ぐらをつかんだり、
・「買わないと来年から取引しないぞ」と脅したり、
という分かりやすい『強制販売』の形でなくとも、「あの~前回ご案内したおせちの件ですけど、ちょっとノルマ厳しくて、なんとかもう一度検討してもらえませんか?」と声掛けして、その結果購入させるという、売る側の視点からすれば、それほど不自然とは思えないような行動までも『強制販売』に該当し得るということです(少なくともそのように読める基準を公正取引委員会は発表しています。)。
※まだ正式な解釈は示されてはいませんが、ほぼ間違いなく「フリーランス保護法」上の禁止事項についての判断にも、この「下請法」上の基準は踏襲されることが予想されます。
過去にはブライダル業界において実際に全く同じ事例で「下請法」違反の勧告処分が出されています。もちろん、ホテル・式場等が精魂込めて作られた「おせち」や、頑張って企画された「ディナーショー」に関心があり、自発的に購入したいという取引パートナーも存在しますが、今後ホテル・式場等「から」これらを案内するに際しては、くれぐれも『強制購入』に該当しないようにその「売り方」に留意が必要となります。
ぜひ、上記の基準を参考になさってください。
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